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短編小説・交換日記はいかがです4

短編小説・交換日記はいかがです4


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五月雨(さみだれ)を集めて早し最上川。

そして陽暦の、梅雨の頃に近ずいて来るのである。
この頃になると、人々は、季節の花を求めて、園芸店へ出入りすることが多くなる。
花といえば、赤いラベンダーがいい。
淡いピンクの千日紅もなかなかののものだ。
そんな一人の中に喜一郎はいた。
それは、法要から二十日ほど、過ぎていた頃のことだった。
リリリーン、リリリーン。電話機がなっている。
「もしもし、喜一郎さん」。
少し甘ったるい、高音の声がきこえてきた。
「はーい、九条です」。
「お久しぶりです」。
「晶子さん、そうですね」。
「はーい、晶子です」。
喜一郎は、まず、法要のお礼を述べた。
それから何故か気になった、元気のない声について質問していた。
「喜一郎さん、一度会っていただきたい人がいるのです」。
「会っていただきたい人?さて」。
どんな人かまるで、想像できない。
「じつは、私のクラスの女生徒が、不登校になってしまって」。
と晶子。
「不登校、それは大変ですね」。
と喜一郎。
心配そうな声が、晶子の耳にも伝わって来る。
「それで、その母親が深刻なまでに落ち込んでいるんです。相当ストレスが貯まっていて、精神的にも、危険な状態にあるのです」。
「私に、その母親とですか」。
「そうです。是非お願いします」。
と晶子。
必死になっている。
喜一郎は、何故、私なのだろうか。そんな思いがしてならない。
教育について、余り知識がない。どうしたものか、結論を出せないでいる。
「兎に角、一度会ってくださいね。お願いします」。
晶子の、沈痛な声が、喜一郎の胸を締め付けた。
先生って、どうしてこんなにも大変なんだろうね。きっと、私心を超えた、高貴な存在なんだろう。その輝きに、鼓舞されて、後を追うように、成長していくのが生徒達なのだろう。喜一郎にとって、重い荷物になるかも知れないのである。
喜一郎も、弟子の赤舟の、初の歌集、その出版を控えていた。
協力してやりたいと思っていたのである。とても晶子の願いを聞ける気にはなれなかった。
「お願いします。兎に角会ってあげて下さい」。
晶子は念を押した。
喜一郎が佐和湖に会ったのは、晶子から電話があってから五日後のことだった。
佐和湖は、晶子から聞いてからあくる日には電話を入れている、実に早い。
喜一郎は、そのスピードの速さにおどろいた。
重い荷物を背負って歩く旅人になってしまうのだろうか。
そんな、不安さえ覚えてしまうのである。そ
れでも、喜一郎は考え、予習と言うものを試みているのである。
そして、やっと今日を迎えたのである。
「先生」。
と佐和湖は言う。
「先生は止めてください。喜一郎さんでいいんです」。
佐和湖は戸惑った。
「でも、どうして不登校になってしまうのでしょうねえ」。
「ウーン。それは精神面の弱さにあると思います」。
「弱さ」。
佐和湖は意外な顔をした。
人生は何の為にあるかというと、それは、勝利する為にある。
それは、一貫して変わらない、喜一郎の哲学である。
佐和湖は次の言葉を待っていた。
「学校へ通学して学ぶということは、ある子にとっては喜びであり、又ある子にとっては、苦しみや、試練以外の何ものでもないのです」。
「そう言って下されば、少し分かります」。
と佐和湖。
喜一郎は自分の生きてきた人生経験を淡々と語るのである。
その中で、目標に向かって、勝利を収めたときの充実感を、訴えるのである。
佐和湖に、喜一郎の思いやりが伝わっていく。
「やっぱり、生き抜く勇気が一番だと思います。勇気さえあれば」。
「勇気ですか」。
「そう、勇気です。一つ一つの試練を、まるで次から次へと、軽妙なタッチで乗り越えていくしたたかさ。それは、勇気から生まれて来るものだと思います」。
「学校へ行って勉強すること。先生や友達との付き合い。それも、試練なのですか」。
「子供にとって、試練である場合もあると思います」。
喜一郎は、微笑みかけながら言った。
「では、どうすれば、勇気のある強い子に成れるのでしょうか」。
佐和湖は質問した。
「一つ一つに、結果をだすこと、成功すること、勝利することです」。
喜一郎は、断定的に言った。
「晶子先生の話は、一つのことに徹しきって学んでいく。相すれば、何かが見えてくる筈だと、そう、言っておられました」。
「晶子先生は、一つの事に徹すること、それが重要だと言われるのでしょう」。
「そうだと思います」。
「徹しきって、成果や、勝利していけば、喜びも沸いてくるし、更なる勇気にも繋がってゆくのです」。
佐和湖は全てを理解した。
「さあ、話はひとまず置いて」。
と言って、お茶をだす仕草をする。
「美味しい、茶菓子を戴いてねえ、ぜひ」。
と言ってテーブルに並べるのである。
「これは、何処で作られたの」。
「此れは、金蝶園の水まんじゅうと、金蝶饅頭と言って、美濃の、大垣駅前の店で売っているん」。
「へえ、でも、とても美味しい」。
口一杯に頬張るのである。
「大垣は、水の都と言って、水がとても、美味しいんだ」。
と喜一郎。
「じゃあ、お米も美味しいのねえ」。
と答える佐和湖。
「大垣には、友達が居てね。よく気を遣ってくれるやつなんだ」。
「それで、これを、送ってくださる」。
「ああ」。
二人の会話は弾んでいく。
「佐和湖さんなら、きっと、人生という大きな舞台で、活躍出来る役者になれるでしょう」。
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プロフィール

白浜 砂夫

Author:白浜 砂夫
どうも ”しらはますなお” です。

岐阜県大垣市在住
昭和24年1月11日生まれ
67歳
B型

好きな歌人は、女性では与謝野晶子、男性では、島崎藤村、石川啄木です。詩や和歌や小説を書き始めて20年あまりになります。鹿鳴館を舞台にした小説を書いております。63歳にして一念発起してパソコンを始めました。ブログにも初挑戦です。

最新出版物
白浜砂夫の電子書籍




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