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中編小説・天使の君は、輝いているかい???9

中編小説・天使の君は、輝いているかい???9


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そして、一ヶ月は流れた日のことである。豊は、押入れの奥深く、柳行李の中に眠っていた卒業文集を発見した。それは、数々の教科書と、アルバムと一緒に眠っていたのである。それは、亡くなった妻が大切に絞まっておいてくれたに違いない。
「ありがとう」。
と呟く。
文集は、豊にもう一度読んでおくれと、そう叫んでいるようでいた。
私達、大人が忘れてしまった、純粋な心の叫びが書き記されている。
秋男の文章より、抜粋してみる。
お父さん、時には一緒にキャッチボールをしておくれ。
何時も、暖かく見守っているのが父親というものだと、語ってはくれるが、俺には、お父さんが見えないでいる。
友よ、君達とはよくけんかをしたけれど、許してほしい。俺は学級委員なのだ、わかってくれ。
これからも、信じあえる友達でいようよ。
先生、先生には逃げないで正面からぶつかっていきたかった。本当は、先生に叱られることが怖くて仕方がなかったんだ。バカだったんだ俺は。いい子ぶってただけなんだ。先生とは、一杯喧嘩をすればよかったんだ。きっと仲の良い兄弟になれたかもしれない。
先生、俺たちが卒業しても、ここにいておくれ。悪いことをしたら飛んできて叱っておくれ。俺は待ってるぜ。
「秋男、御免よ、遠くへ行ってしまって」。
豊は独り言を言う。
愛子の文章より抜粋してみた。天国から私達を見守ってお父さん、本当に有り難う。小学校を卒業することができました。少し大人になったような気がします。これからは、私がお母さんを支えてあげたいと思います。お父さんのように広々としたこころで、支えてあげることが、私の喜びになるとおもいます。お母さんは泣き虫です。いつも、大きな柱に隠れてシクシク泣いています。もう涙の似合わない、お母さんを悲しませたりしません。
「そうだねえ、愛子は優しい子供だった」。
豊の頬を流れる一筋の涙。
こんな時には、モーツアルトのバイオリン協奏曲を聴いてみよう。
CDから流れる調べに、身も心もリラックスしていくゆくことだろう。

それから、半年後のことである。豊は再び学校を訪れたのである。鞄の中には卒業文集が入れられている。豊は校長先生を訪問した。校長先生は笑顔で迎えてくれたのである。卒業文集の出版には、了解を得た方が良いと考えた豊なのである。何故、こんな小さな田舎町の小学校から、卒業生達があらゆる分野で優れた活躍をしているのか、不思議といえば、不思議である。なにか、量ることの出来ない大地の力がはたらいているのだろうか。母なる大井川は、悠久そのものである。父なる権現山は屹立している。この山河に抱かれるように建っている山間の木造の校舎は、芸術そのものである。
木の霊でも住んでいるのであろうか。校舎も又、悠久から、永遠へと続く階段を登ってゆくように見えてくる。
活字とは実に強きものである。永遠にも耐える力を持っている。人の心を打つ文章は、時空を超えて再び、帰るべき人のところに、帰りかえり来るものであろう。卒業文集は、長い年月をへて、再び日の目を見ようとしているのである。今度は、もっと多くの人に読んで頂きたいと思う豊である。
夕方、逗留先の民宿に、愛子が訪ねてきていた。
その顔は明るかった。
「実に良く書けていた。それは、小さな作家の仕業と言ってもいいだろう」。
「先生、如何してなの?」。
愛子は、答えが欲しくて仕方がない。
「子供たちの、直な心、一途な心が書き留められている。感動を覚えずには居られなかった」。
「拙い私達なのに」。
「父親のいない愛子や、母親のいない節子が、必死になって、お父さんやお母さんを守っていた」。
「お母さんが、不憫でならなかったの」。
「有り難う愛子、よく言ってくれたね。その、必死さが人の心を打つのかもしれないね」。
微笑かける豊である。
「有り難う?お礼を言わなければならないのは私達なのに」。
理解に苦しむ。
ふと、それが人柄というものだろうかと、思ってもみる愛子である。
「学ばせていただいたんだよ、生きるってことは、必死になることだったんだと」。
「先生」。
と愛子。
「本当に、よく頑張ってきたね。今日まで、必死に。それが、愛子たちのよいところなんだなあ」。
「私達には先生がいた。先生が見守ってくれている。その思いがずっと続いていたの」。
愛子の目から大粒の涙が流れていた。
「良い先生ではなかったが」。
「それは、私達が決めることですは」。
言葉が出てこないでいる豊。
「お兄さんみたいな先生だった」。
「そういえば文集の中で、愛子は、将来は学校の先生になるって書いてたね」。
「そうでしたわね」。
「愛子が、学校の先生になりたいって意外だった」。
「どうして」。
「愛子は勝気だから、旅館の女主人になるとおもっていた」。
「まあ、先生ったら」。
愛子は、うれしそうに微笑んだ。
会話の中で、教え子の北沢良子や、大原裕次郎のことが気になって仕方がないと言う。
それはきっと、自分の境遇に似ているからだろう。
豊には、豊富な人生経験がある。
「自立心のある子なら大丈夫だ。立派な子になるぞ。先が楽しみだね」。
「先生、有り難う。それは、遠い過去の、私でも在るわけですね」。
「そうだ、どちらもだ」。
愛子、頷く。
「天使の君が輝くとき、全てが輝く」。
「ハイ、先生」。
「光、輝け愛子、頼むぞ。君が輝けば、教え子たちは、引っばられて、輝いてくる」



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プロフィール

白浜 砂夫

Author:白浜 砂夫
どうも ”しらはますなお” です。

岐阜県大垣市在住
昭和24年1月11日生まれ
67歳
B型

好きな歌人は、女性では与謝野晶子、男性では、島崎藤村、石川啄木です。詩や和歌や小説を書き始めて20年あまりになります。鹿鳴館を舞台にした小説を書いております。63歳にして一念発起してパソコンを始めました。ブログにも初挑戦です。

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白浜砂夫の電子書籍




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