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中編小説・天使の君は、輝いているかい???7

中編小説・天使の君は、輝いているかい???7


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やがて、卒業式の日は来た。
『仰げば尊とし我が師の恩、教えの庭にも早行く年・・・』。
歌は流れる故郷の山河に。仰ぎ見れば澄み渡る大空の優しさ。
泣かないで、泣かないで、こんな陽射しの日は、微笑みを返しながらお別れしようね。
こんな、良い子供達の先生で要られことの喜びと、切なさが、豊先生の人生に、輝きをもたらしているのだから。
卒業式の無事に終了した。
教職員がほっと一息つくのもこのころのことだ。
どんなに新しい木造の校舎でも、時を重ねていく中で、やがて、丘や林に溶け込んでゆくものである。
青黄色い苔に年輪を感じるのは不思議としかいいようがない。
そこには学童達が付けた傷跡が、多々見受けられる。
校舎の歴史は彼らが作るのである。
その温もりが恋しくてならない豊先生である。

さて、人生の歴史はどの様にして作られるのであろうか。
一つだけわかることがある。
それは、小学校の先生の影響が、余りにも大きすぎるということである。
三月三十一日の朝。涙色した大空に舞う小鳥よ。
「先生、行かないで」。
愛子は叫んだ。
豊は、無言で借家の門をでた。
風説は、どんなにか母、孝子や愛子を苦しめたかしれない。
さて、豊に孝子を慕う心がなかったかというと、有ったというべきであろう。
慕う心とは、恋ではない。まして愛なんかじゃあない。
それは、姉をも慕う心にも似て、淡きものなのである。
その、言葉で表しえない、淡きもの為に、切なくも苦しんだのである。
「先生、何処へ行くの」。
節子は泣きながら叫んだ。
「さようなら、元気でいろよ」。
豊は手を振った。
「先生は俺達を見捨てていくのか」。
秋男の声は怒っていた。
段々、遠くなっていく豊の姿が二重三重に浮かび上がる来る。
「豊先生・・・豊先生・・・」。
合唱は風に乗って、山間を流れていった。
町の中心地に向かって、とぼとぼと、歩いていく豊の足取りは重たかった。
短い年月ではあったが、おもいでは一杯詰まっている町。
伝言板には、愛子と、節子、好恵からの、メッセージが書いてあった。
伝言板のある、小さな駅の待合に孝子はいた。
「これを」。
と言って、手作りの弁当を手渡すのであった。
「有り難う」。
と言って受け取る豊。
後の言葉が出てこなかった。
「さようなら」。
と一言言って、孝子は溢れ来る涙を手で拭きながら足早に去っていったのである。
孝子に会ったのは、これが最後になったのである。
金谷駅までの、電車の旅。
長閑で、静寂が支配している様で、まるで故郷そのもの暖かさが、包んでいるのだ。
「さようなら、私の故郷」。
と豊は呟いた。
金谷駅から、東海道本線へ乗り継いで、豊橋、名古屋、一宮、大垣と来て、大垣駅で降りたのだった。

話は今から十年前に遡る。
前原豊は恩師の小泉先生と、和歌山県の湯崎温泉を訪れていた。
湯崎温泉は、南紀白浜空港から、タクシーで飛ばせばすぐの所にある。
古代の白良浜の地で、歌枕にもなった所である。
恩師と温泉に入って対話をするなんてことは、生涯に一・二度あればよき事と思はねばならない。
体を温めながらのひと時は、満ち足りた時間となったようである。
「良き人生だったよ、私は真の先生にも恵まれて」。
と恩師の言葉である。
豊は相ずちを打つ。
「私はねえ。何時も先生の教えを守って来た。そんな人生だったように思う。何の迷いもなかった」。
そこには、七十七歳の老人の言葉とは思えない、初初しさがあった。
小泉先生は、豊に説教しようと言うのではなかったようだ。
唯、豊が抱えている、心の重荷を、取り除いてやれるものなら、何としてでも取り除いてやりたい。小泉先生も、真の先生なのでしょうね。
美しき人間の心絆は時空を超えて光り輝くものである。ましてや、師弟の契りは三世に渡って輝くのである。良き師、師匠に恵まれることは、どの道においても、最高の幸福というものではないだろうか。
「先生、湯加減は如何ですか?」。
「うーん、良い湯加減だなあ」。
先生は答える。
「熱過ぎず、ぬるくもないということですね」。
「それは、何処か人を思いやる心に通じている」。
と先生。
そう言った後で、酒を飲む仕草をするのである。
この夜の酒宴は、何故か、仲居さんも加わって大いに盛り上がったのである。
仲居さんも人の子だ。
朗らかで、太っ腹な先生と飲みたいと思うものだ。

さて、東海道金谷駅から大井川鉄道を利用する。
大井川鉄道は、町内の各駅を繋いで、下泉より千頭、奥泉を通って井川駅まで線路は延びている。
寸又狭温泉へは、千頭駅で下車して、バスに乗り換えて、温泉バス停まで行くのが一般的である。
井川線は急勾配を登るため、歯型レールを使用した日本で唯一の、アプト式ミニ鉄道である。
又、平成十六年には、二十九年ぶりにシ一一九○~一九〇号の蒸気機関車が、乗客を乗せて走ったのである。
豊は、この一日一便の、金谷駅から千頭駅までの機関車を乗り継いで終着駅に来たのである。これは時の巡り合わせというべきであろうか。時空の持つ不思議な力によるものだろうか。豊は、一人旅を愉しんでいたのである。その終着駅で愛子に会った。愛子は当ての無い旅をしていた。愛子の顔は苦悩に満ちていた。やつれた細身が痛々しい。
豊の胸は締め付けられた。実に二十九年振りの再会である。
『まだあげ染めし、前髪の、りんごのもとに見えしとき、前に刺したる花串の、花ある君と思いけり』。(島崎藤村、初恋より)。
人生って、初恋のように、甘く切なく、それでいて、恋しくて、忘れられないもののように思えるときがある。
その、忘れることの出来ない教え子達。
子供達はどんな人生を辿ったのであろうか。書き添えておきたい。
豊の予想を超えた職業についているからおもしろいのである。
人生とは波乱万丈なのである。
和夫は、県立高校を出て、地元の国立大学の夜間部に入った。働きながら専門知識を学んだようだ。東都の大学院では研究に没頭した。今ではその大学で助教授をしている。ノーベル物理学賞を期待できる、有望な科学者と伝え聞いた時の、豊の驚きは、表現できたものではない。和夫は、父母の志を継いで、実業家になるものと決めていたからだ。
秋男の人生も波乱に満ちている。秋男の父は、中学校の校長をしていた。祖父は、村長を永年勤めた家系だ。典型的な地元の名士だ。将来は、町長か県会議員になるものと、豊を始め誰もが思っていた。東京の有名な私立高校に入学。そのままエスカレータ式に大学部に入ったのである。大学部では音楽に熱中した。手当たり次第に楽器をいじった。秋男は、その中から音楽の持つ魅力に注目した。卒業後、アメリカに渡った。アメリカで、ミュージカルやショウの世界を見学して回った。
秋男は又、劇場経営について勉強したりもしている。帰国後、あるプロダクションで、五年働いた後、飛び出して僅か四年で、新興証券市場に株式を上場させるまでになったのである。
「大衆に、限りない心の豊かさを与えたい」。
彼が、株式の公募を前に、新聞記者に語った言葉である。
豊は、いつの頃のことか忘れてしまったが、秋男から、望むようにして訪問を受けたことがある。有難いことである。実のところ、師の良し悪しは、弟子の功績によるといっても過言ではないのである。
「これからは、大衆に喜びと、心の豊かさを与える企業が必要なんだ。人間ルネッサンスこそ我が使命」。
秋男の声が今も耳に残っていて消えないでいる。人生は戦いの連続だ。挫折もあったであろう。苦闘の山坂を越えてきた自信が笑顔になって現われていた。豊の家へ訪問してその後、証券市場に上場されたのである。新興市場は、第四次産業の出現に沸いた。第四次産業が、希望の星と成る時がきているのだ。音楽、映画の企画、運営、文化祭の企画立案、運営。劇団の経営、劇の上演、オークション、美術館経営など。文化、芸術分野のゼネコン言ってもいいだろう。




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プロフィール

白浜 砂夫

Author:白浜 砂夫
どうも ”しらはますなお” です。

岐阜県大垣市在住
昭和24年1月11日生まれ
67歳
B型

好きな歌人は、女性では与謝野晶子、男性では、島崎藤村、石川啄木です。詩や和歌や小説を書き始めて20年あまりになります。鹿鳴館を舞台にした小説を書いております。63歳にして一念発起してパソコンを始めました。ブログにも初挑戦です。

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白浜砂夫の電子書籍




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