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中編小説・天使の君は、輝いているかい???6

中編小説・天使の君は、輝いているかい???6


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明けて、月曜日の午後のこと、職員室へ帰っていく豊先生の、後ろ姿はどこか寂しげであった。
職員室では、博子先生がお茶を飲んでいる。
「博子先生」。
「豊先生、どうしたのですか」。
博子先生のびっくりした顔。
「それでも、やっぱり、良い先生にはなれない」。
と言う。
「良い先生にね」。
と言って溜息をついた博子先生。
今、町では、豊先生と愛子の母、孝子さんとの仲が噂になっていた。
その噂は、とうとう、豊先生の耳にも入って来たのである。
博子先生は、その噂に我慢出来ずにいた。
生徒のことを思い、あんなに必死になって、家庭訪問を続けた豊先生である。
どうして分かってくれないのだろうか。
博子先生にとっても、辛い噂ではあった。
「私が独身だったら、豊先生のことを好きになったかもしれないわねえ」。
と思うのである。
続けて、
「そうね、弟にしたい人でもあるわねえ」。
博子先生は、豊先生に言った。
偶然が重なったとしか思えない、博子先生の言葉。
「うーん。私がお姉さんで、そうよ・・・」。
彼女は自分の言った言葉にハっとしたのである。
真実は意外なところから、発見されるものなのかもしれない。
姉のように、妹のように、兄のように、弟のように、この淡きものよ、いっそ、恋といえるものなら諦めも出来よう。
春よ、淡き春を過ぎて、青春(人生の春)の時。
それは又、別離と旅立ちのときでもある。
昼ならば霞と見えし春の宵に、秋男の家へと向かう姿が見受けられるのである。
「学級委員」。
と小林次郎は、秋男に声を掛けた。
「どうした、次郎」。
ちょっと悲しそうに、
「知っているかい、豊先生のこと」。
「豊先生がどうしたんだ」。
と秋男。
何事かあったのであろうか、騒然としてくる。
「豊先生が・・・豊先生が・・・学校を辞めるらしいんだ」。
と言いながら、秋男を見詰める和夫。
和夫は駆け付けて来たのか、息苦しそうであった。
「辞める、豊先生が、そりゃあ、えらいこっちゃ」。
と秋男。
「そうだろう、な」。
と和夫。
やがて、衝撃はクラス中を駆け巡っていったのである。
「ねえ、卒業式はどうなるの」。
好恵も駆けつけて来た。
「きっと、卒業式が済んでからだ。その後のことだと思う」。
と言って和夫は皆の顔をみる。
「嘘でしょう、先生が辞めるなんて」。
信じられないという表情をしてみせる節子。
憂いに満ちた顔と顔を合わせる級友たち。
その中で、一人愛子だけは違っていた。
悲しみは、駆け足でやってくる。
「先生は、この学校を去っていくんだよ」。
と愛子。
断定して言うのである。
「どうしてなの?」。
好恵は愛子を問い詰める。
愛子の目から涙が溢れてきた。
過日、愛子の家で、
「俺って、どんな先生だった?」。
と問うた豊先生の余りにも寂しそうな顔。
子供心に、解らないことは一杯ある。
子供だから解ることもある。
子供は別離を恐れる、それ故に全てを察知したのである。
「先生は、何処へ行ってしまうの」。
節子は答えを求めた。
「何処か遠くへ行ってしまうのだろう」。
秋男の声は段々小さくなってゆく。
「何処か遠くへ行っても、俺は先生のことを忘れたりしない」。
和夫は、自信たっぷりに言った。
「何時も、先生はそう、よく話を聞いてくれた」。
秋男は過ぎ去りし日々を思い出しているようである。
「お願い、先生のこと、そっとしておいてあげて」。
と愛子は言う。
「どうしてだ」。
と和夫は聞く。
「何処か、自分を責めているところがあるのよ」。
と愛子は言う。
「お父さんの代わりにはなれなかったから?」。
と節子の嘆き。
「ううん、お母さんの弟になりたかったのかも、それに、私のお兄さんにね」。
愛子は返答をした。
「何だ、愛子の希望ばかりじゃないか、それは」。
と秋男。
「俺たちが卒業したら・・・先生寂しいんだ。きっと、そうなんだ。そうに違いない」。
と和夫は言う。
「寂しいに決まっているじゃないの。あんなに優しい先生だもの」。
節子の目から涙が溢れてきた。
「泣かないで節子。涙なんか似合わないから。先生は辛くなったんだよ。きっと」。
愛子は慰める。
天上を見上げながら、最後の家庭訪問となった日の事を思い出している、そんな愛子である。
母、孝子の頬を流れた一筋の涙、涙は別れの来ることを知っていたのである。
「皆、大好きな先生って慕ってくれるけど、良い先生には成れなかったよ、と豊先生は私に謝っていた」。
語る愛子の心の底にあるものは?。
「先生、そんなこと言ってたの」。
節子は聞いた。
「うん、そうだよ」。
と愛子。
「先生、何処へも行くな」。
和夫は、大きな声で言った。
「俺たちの傍にいてよ」。
と秋男、涙混じりの声。
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プロフィール

白浜 砂夫

Author:白浜 砂夫
どうも ”しらはますなお” です。

岐阜県大垣市在住
昭和24年1月11日生まれ
67歳
B型

好きな歌人は、女性では与謝野晶子、男性では、島崎藤村、石川啄木です。詩や和歌や小説を書き始めて20年あまりになります。鹿鳴館を舞台にした小説を書いております。63歳にして一念発起してパソコンを始めました。ブログにも初挑戦です。

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白浜砂夫の電子書籍




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