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中編小説・天使の君は、輝いているかい???3

中編小説・天使の君は、輝いているかい???3


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                                   中編小説・天使の君は、輝いているかい???2




さて、時代をさかのぼって、一つ一つを明らかにしてみたい。
愛子は、父の無い子だった。
母、孝子の女手一つで育てられたのである。
孝子の苦悩は、仕事の忙しさにかまけて、愛子と一緒に遊んでやれない事だった。子供にとって、遊びとは、信頼できる人としか出来ない行動なのだ。子供が母、孝子と遊びたがっているということは、誰よりも信頼し、愛を求めている証拠でもある。こんな時は、早世した主人を恨んでみたくなるものである。
「お父ちゃん、どうして先に逝ってしまったの」。
溢れくる涙を拭うには、抱き上げた愛子は重たすぎたのである。
(人は、心の中に、どんな幸福そうな人でも、悲しみの海を抱いている)。
これは、ビクトル・ユゴーの言説である。
まして、最愛の夫を亡くしたのであれば、悲しみの海は、余りにも深すぎると言うことになる。
二人だけの夕食時間のこと、
「お母さん、お父さんを恋しく思って泣いても、もう私のことではなかないで」。
子供というものは、親が思う以上に、心配し、思いを掛けるものだ。
「愛子、どうしたの」。「私きっと、いい子になるから」。
「もう、愛子ったら」。
愛子にとっても、父が居ないということは、悲しいことに違いない。けれども、母の心の中に生きている限り、母子共々に、父は、永遠に存在するのだ。

中川根町は、県央のやや北よりに位置している。
北に本川根町。南に青空町が隣接している。
昭和三十一年に徳山村を編入、昭和三十七年に今日の町制となっている。
徳山城は、土岐氏の居城として、標高千百メートルの高地に築城された、曲輪、塁段が名残を止めている。同じ山城である、織田信長の岐阜城は、三百三十六メートルの山頂にある。比較すれば、いかに高地に築城されたか理解されるであろう。町の見所は、不動の滝であろうか。場所は、大井川鉄道の下泉駅で下車して、徒歩で四―五十分の所にある。大井川の支流に掛ける高さ三十メートルの滝である。周囲を緑に抱かれて、真っ白な飛翔をあげて落下しているのである。緑射す新樹、夕もやに霞む紅葉の季節が格段に優れている。山紫水明の地とはこれなり。見渡せば、無双連山をのぞむことが出来る。
おお、無双連、お前は、誇り高き山よ。古き言い伝えによれば、江戸の代官、浅原四郎衛門が、当、大山にて椎茸を尋ね当てたるに、大いに喜び、当山を村にて持てりと、下し賜ったのである。無双とは、並ぶものの無きほど勝れているということである。
豊先生の、想像するところによると、代官「天下無双」と、膝をたたいて褒め称えたのである。天下無双と、語ったのであれば、日本一の、椎茸の山よと命名したようなものである。あの日、あの時の、豊先生の身振り手振りの講義は、大変おもしろかったのである。

昔は、学校から、てくてくと歩き、春秋の遠足を愉しんだコースである。
秋の彼岸の一日、山田秋男は、豊先生を引っ張りだした。
愛子や節子を伴ってハイキングに訪れたのである。
「節子、あなたの分も作ってきたからね」。
「わあ、本当だったんだ。有り難う」。
母の無い節子にとって、昼食は切実な悩みだった。
「愛子、すまないな、無理を言って」。
秋男はお礼を言った。
「ハイ、先生、どうぞ」。
と愛子。
「ああ、これは、どうも有り難う」。
「お母さん、嬉しそうだった」。
と愛子。
愛子が、お母さんと作った、本当の手作りの弁当や、サンドイッチ、それに冷たい緑茶は、何時までも、豊先生を始め、秋男や節子の思い出のなかに生き続けていったのである。
成熟した時代ではなかったけれど、信頼と友情で結ばれた、心豊かな、少年少女達であった。
秋男が五年生になった初夏のことである。夏休みを明後日に控えた時のことだった。彼が、国語で百点をとった。初めてのことである。彼はずっと、六十~七十点の成績の範囲だった。まあ、中の上というところであろうか。豊先生は、驚きの中にも嬉しさを隠し切れなかった。直ぐに、秋男を職員室によんでみた。
「秋男君、よく頑張ったね」。
「うん、俺、先生のこと大好きだよ」。
「俺のこと?」。
山田秋男の言った言葉は、嬉しい言葉であった。
彼の顔を見詰める豊先生。
「うん、先生のこと」。
「どうして」。
「だって先生は俺のことを、秋男君、秋男君と、君をつけて呼んでくれるから」。
「それがどうして」。
「俺のお父さんなんか、何時も、秋男、秋男って呼び捨てなんだよ」。
「うん、お父さんはね・・・」。
返事に苦しむ。
「そう、それにすぐ怒る」。
「お父さんはね、君のこと」。
怒られることが、嫌であるのだろうか。
彼のお父さんは、中学校の校長をしている。
「いいんだ、俺には先生がいるから」。
秋男は嬉しそうに、微笑んで職員室を出て行った。
そばに居た、安田博子先生が、声を掛けてきた。
「あの子、先生のことを、友達の心算かお兄さんのように思っていますね」。
振り返って、
「うん、兄弟って感じかな」。
豊先生は納得したような口調で答えていた。
「羨ましいわ」。
「いやぁ」。
「川根茶はいかがです」。
博子先生はお茶を差し出した。新茶のほのかな香りを、二人でかいでいる姿が、校庭からも見うけられたのである。
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プロフィール

白浜 砂夫

Author:白浜 砂夫
どうも ”しらはますなお” です。

岐阜県大垣市在住
昭和24年1月11日生まれ
67歳
B型

好きな歌人は、女性では与謝野晶子、男性では、島崎藤村、石川啄木です。詩や和歌や小説を書き始めて20年あまりになります。鹿鳴館を舞台にした小説を書いております。63歳にして一念発起してパソコンを始めました。ブログにも初挑戦です。

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