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中編小説・天使の君は、輝いているかい???2

中編小説・天使の君は、輝いているかい???2


                                   中編小説・天使の君は、輝いているかい???1




花よ、貴女は、何と美しいのでしょうか。
中でも、バラのチャールストンは、余りにも美しい。
この花は、あの、物腰の柔らかい、奇特な人が、特別に育てたものらしい。
豊は、注目せずにはいられなかった。
「失礼ですが」。
声を掛けたのである。
「いいえ、失礼なことなどありませんよ」。
明るい声で振り向いたのである。
「貴方さまは」。
「私ですか、まぁ、お茶でもどうぞ」。
そう言ったあと、ゆっくりと、立ち上がったのである。
「お茶を戴けるのですね」。
豊は、彼の人となりを知ったのである。
山本校長は、豊を応接室に迎えた。
豊は、恐しくしながら頭を掻いていた。
「よく来て下さいました」。
「此方こそ、迷惑も顧みず」。
深々と、頭を下げたのである。校長先生は、笑顔の似合う人である。
「此処には、なにか置き去りにして来たものがあるような、気がしてならないのです」。
「ほほう」。
「子供達を、送り出した後、すぐに、先生を辞めてしまったのですから」。
「何か、事情でもあったのでしょう」。
暫し、間をおいた後、
「子供達を、見捨ててしまった様な、罪悪感に、苛まれているのです。年月を重ねれば重ねるほど」。
校長先生は、目を閉じたまま答えない。
「子供達の帰るべき拠り所を、奪ってしまったのですから」。
校長先生は、目を開けて、
「苦労されましたね。その苦労が生きている」。
校長先生、有り難う。良く言って下さいました。
「少しは苦労したのでしょうね」。
と豊。
彼が、正直ないい人に思えたのであろう。
「人を教えるということは、どういう事なのでしょうか?」。
質問するのである。
「人を教えるという事は、人から、より多くの事を学ぶということだと思います」。
「では」。
「貴方が、子供達を、教えていた日々は、貴方が、子供達から、より多くを学んだ日々だったと思います」。
物静かな語り口ではあったが、言葉に力があった。
「よく言って下さいました」。
豊は頭を下げた。
「こちらこそ」。
「今も、子供達に、すまない気がしてならないのです」。
この人はきっと、子供達に慕われたに違いない。
「先生を辞めるとは、誰も思はなかったでしょうね」。
「申し訳ない気持ちで一杯です」。
校長先生は片手を挙げて、言葉を押し止めた。
「子供達を、心の何処かで、見守り続けていた。だから、この学校に帰ってきた。帰ってきたのですね。そうですね」。
「そうだと思います」。
何故か素直に言えた。
「良き人生を歩まれたようですね」。
「分かりますか」。
微笑みを返す。
「苦労されたことが生きている」。
「ただ、子供達にとって、良い先生だったのでしょうか。そのことが・・・」。
校長先生は首を振った。
「現在、何をしているのですか?」。
「今年で、会社を、定年退職します」。
黙って頷く校長先生。
「その後、趣味で始めた洋画の道を目指そうと思います」。
若き日々、をどう生きるか。それも、長い人生の道のりの中、大きなウエイトを、占めてくることがある。
「画家ですか。失礼ですが、学生時代の専攻は?」。
「教育学部で、地理、地学を専攻しました。クラブは美術部です」。
「クラブね、そうでしょう」。
一人頷く。
「如何しても、人生の一区切りがつきますと」。
「素晴らしいことですよ」。
と校長先生。
「それも、先生をさせて戴いたおかげです。道を踏み外す事無く、今日までこれました」。
深々と頭を下げる。
豊はその言葉通りの人生を歩んだのである。
会社に入ってからは、自ずから望んで、現場から叩き上げて来たのである。汗をかくことの大切さを知っていたのかもしれない。最後は、取締役業務部長で終わろうとしているのである。校長先生は、まるで自分の教え子と対面しているような、そんな気分になってきていた。
「こんな教え子を持ったら、どんなにか幸せだろう」。
「いえ、そんなこと」。
豊はビックリした。
「教え子が、立派な人生を歩むという事は、先生の誇りであり喜びである」。
語気を強めて言った。
「それで、私の心は、救われるのでしょうか」。
校長先生は、頷きながら、
「それが、先生の心なのだと思う」。
「私は、先生だったのですね?」。
「過去も、現在も先生です。教え子達にとっては、たいせつな」。
これは、激励の言葉というより、労いの言葉というべきであろう。豊の、心の重荷は、少し取れたようである。
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プロフィール

白浜 砂夫

Author:白浜 砂夫
どうも ”しらはますなお” です。

岐阜県大垣市在住
昭和24年1月11日生まれ
67歳
B型

好きな歌人は、女性では与謝野晶子、男性では、島崎藤村、石川啄木です。詩や和歌や小説を書き始めて20年あまりになります。鹿鳴館を舞台にした小説を書いております。63歳にして一念発起してパソコンを始めました。ブログにも初挑戦です。

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