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短編小説・旅情という名の詩集3

短編小説・旅情という名の詩集3


                         短編小説・旅情という名の詩集1
                         短編小説・旅情という名の詩集2


静かなる朝というよりは、平穏の内に迎えた朝だった。
今日は、予てよりの約束、そう、北条文子との約束である文芸部での講演である。
琵琶湖短期大学付属高等学校は、琵琶の海(みずうみ)を広大なるまでに内にして見下ろすことの出来る高台にあった。
「先生、準備は万全です」
と、村上文芸部長。
文子は、幸夫部長の人となりと、手配りを説明するのである。
三年B組、文子のクラスには、部員の他に外部の人も聞きに来ていたから、六十名は超えていただろうか。
満員の熱気が、孝夫先生の情熱を駆り立てる。
教壇から、
「芦ノ湖は泣いていた。捨てられた男と、捨てた女の悲しみを、まるでオブラートに包むように湖は泣いていた。霧の芦ノ湖、霧の中を走る遊覧船。その船上から手を振っている女性の姿が幽かにみえる。その女は、愛に生きた人なのだろうか。あの人は一途に生きようとしている人なのだろうか。霧の芦ノ湖は知っていた」
この様な切り出しから、孝夫の講話は続いてゆく。
泣いていたのは孝夫であり、捨てられた男も孝夫である。
「捨てた女には、捨てた女の悲しみがあり、捨てられた男には、捨てられた男の悲しみがある。中には、愛の終結の為に、捨てられるように、捨てられるように持ってくる男もいるけれども、如何か、皆様には、愛から逃げないで、愛の重さと、愛の深さに、訪ね歩いて欲しいものです。それが、人生ということだと思います。生き抜くとは、愛を尋ね歩く旅と言うことではないでしょうか。愛の賛歌、それが詩人であり、詩人の魂であると思います。でわ、これで」
孝夫は、深々と頭をさけ壇上を降りた。
「先生、送って行きます」
と、文子と副部長の東條太郎。
孝夫は丁重に断り校門を出た。
琵琶の海(みずうみ)を、長浜に寄りて見つめる孝夫。
彼は、数々の山河を尋ね歩いている。
哀愁の湖、諏訪湖。
郷愁の湖、三方五湖。
浪漫の湖、河口湖。
旅愁の湖、猪苗代湖。
彼の、山河を尋ね歩く旅は続く。

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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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プロフィール

白浜 砂夫

Author:白浜 砂夫
どうも ”しらはますなお” です。

岐阜県大垣市在住
昭和24年1月11日生まれ
67歳
B型

好きな歌人は、女性では与謝野晶子、男性では、島崎藤村、石川啄木です。詩や和歌や小説を書き始めて20年あまりになります。鹿鳴館を舞台にした小説を書いております。63歳にして一念発起してパソコンを始めました。ブログにも初挑戦です。

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