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短編小説・恋愛学入門15(了)

短編小説・恋愛学入門15(了)

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伊勢子は、努めて冷静になろうとしていた。
「嫌いになったからでしょう。そうでしょ」
そう言ってから、涙を拭いた顔を上げるのである。
「今も好きだよ」
歌太郎は、きっぱりと言い切った。
「そんな言葉聞きたくありません」
伊勢子の言葉と眼は、憎しみに代わっていた。
二人は、暫く睨み合った。
「出ましょうか、話は外で」
と伊勢子は言った。
「ああ、その方が良さそうだね」
と歌太郎は答えた。
二人は眩しいほどの青空の下に出たのである。
二人は、暫くの間、並木道を歩いた。
その先に大きな公園を見つけることができた。
人影も少ない町の中の大きな公園だった。
若い夫婦が乳母車を押して、散策しているのが目につくだけである。
「一緒になるってことは、こういう二人のことだろうか」
「そうね、でも貴方は、私が一緒になりたいと言ったら、ただ、黙って断っただけでしたわ」
「そうだったね、そうだったね」
歌太郎は、相槌を打った。
「言って欲しかった。嫌いになったのならハッキリと」
「嫌いになったんじゃない」
「嘘よ、嘘よ、ごまかさないで」
伊勢子は、語気を強めて言った。
「今も、好きだ」
歌太郎も、負けずに言う。
「じぁ、どうしてなの。その為に、どんなに悩み、憎しみ続けてきたことか」
伊勢子は、また泣いた。
続けて言った。
「私はね、貴方と生きる人生を夢見てきたわ。貧しくても良い、何も無くても良い、二人で築いていけば良い
と、それだけで幸福だったわ」
歌太郎は、黙って聞いていた後、ポツリポツリと話し出す。
「本心はね、俺を捨ててほしかった。俺を捨てると言って欲しかった。こんな貧しい、幸福にしてやれない
詰まらない男をね」
「捨てられたかったの?愛しているのに」
「それが、俺の愛。男の愛でもある」
「そう、それが貴方の愛。愛なのね」
やがて、伊勢子に笑顔が戻ってきた。
「私達って、余りにも愛し過ぎたのね」
「そうだねえ、愛し過ぎたんだね」
「まあ、歌太郎さんたら、昔の貴方に戻ったみたい。その笑顔」
「そうか、そうか、そんな私が良かったのか」
「傷ついても良い、喧嘩しても良い、二人で歩く人生だもの。帰ってどの方が幸福なのかもよ」
と、伊勢子。
「歌太郎さんのバカバカ」
と言って、胸元を叩いて、また泣いたのである。
季節は真冬と言うのに、公園を散策する二人に風さえも暖かかった。

そして、日々は流れた。
リンリンと受話器のなる音。
緑子からの電話だ。
「歌太郎さん、どう?詩集の方は」
「ありがとう、やっと完成をみたよ。後は、印刷所に持ち込むだけだ」
「じゃ、ドライブに連れて行ってくれるのね」
「ああ、いつでも行けるよ」
「そうねえ、明日が良いわ。それも、朝早くから」
「朝、早くからか」
「ねえ、遠出しましょうよ」
緑子の明るい声が響いてくる。
「ああ、そうだね。ねえ、緑子さん、恋って何だろう?愛って何だろう?」
「ウフフ、そうねえ、今、現実を味わい、楽しむことかしら」
と弾んだ声で答えたのである。




(了)
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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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プロフィール

白浜 砂夫

Author:白浜 砂夫
どうも ”しらはますなお” です。

岐阜県大垣市在住
昭和24年1月11日生まれ
67歳
B型

好きな歌人は、女性では与謝野晶子、男性では、島崎藤村、石川啄木です。詩や和歌や小説を書き始めて20年あまりになります。鹿鳴館を舞台にした小説を書いております。63歳にして一念発起してパソコンを始めました。ブログにも初挑戦です。

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