短編小説・恋愛学入門14
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愛されて望まれて生まれた赤子と、そうでない赤子とは、知恵、精神性、人格性において格段の違いがある。
愛されて望まれて生まれた赤子は、優れて、豊かな子供、人間に成長していく、とは私説である。
歌太郎や、弟子の湖水が常に語る言葉は、『愛有ればこそ』花も咲き、実も成ろうと言うことなのだろうか。
当日、二人は空席を探すのに手間取った。
ここは、地方には珍しい程の大きな喫茶店だ。
席と席の間には、胡蝶蘭の花々を並べ立てて、まるで花園にいるようでもある。
こんな店内では、歌太郎は紳士に、伊勢子は深窓の麗人になってもおかしくない。
「こんにちは。待たせてごめんなさい」
伊勢子から声をかけてきた。
「お久しぶりですねえ」
歌太郎は、努めて笑顔を心がけるのである。
「はい、歌太郎さんも、お元気で何よりですわ」
そう言ってから、じっと見つめる伊勢子。
「お元気そうで何よりです」
歌太郎は、目頭が熱くなってきた。
「もう、会えないと思っていたわ」
と伊勢子。
頬を流れる涙は熱かった。
「私は、もう会ってはいけない人だと思ってきた」
と歌太郎。
・・・涙なんか流すなよ、男だろう。
その言葉には、愛すればこその秘めた思いがあった。
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テーマ : 自作連載小説
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