短編小説・OLは花盛り6(了) 短編小説・OLは花盛り1 短編小説・OLは花盛り2 短編小説・OLは花盛り3 短編小説・OLは花盛り4 短編小説・OLは花盛り5ギフ・未来に希望自動車(株)編
流れ行く日々の中で、花よりもなを美しく咲く花があるとすれば、それは、貴女だ。
職場で活躍する貴女だ。
人は、それを、『この世の華』と言う。
咲き誇れ、飛騨、奥美濃に咲く、そばの花よ、リンドウの花よ、白百合の花よ。
とある日の事、
「林君、君に頼みがある。松本重役美子を乗せて名古屋へ行ってもらいたい」
と、社長は語気を強めて言う。
「社長、名古屋進出」
と、幸男。
「それもあるが、新たな部門と言う事も」
と、社長。
何か秘策がありそうだ。
幸男が松本美子重役を乗せて、岐阜の本社を出たのはそれからのことだ。
「美子さん久しぶりです。いや。いけない、松本重役」
「いいんですよ、私には」
松本美子さんとは、彼女が、恵那思い出は美し過ぎて営業所にいた頃からだ。
恵那思い出は美し過ぎて営業所は、一番の販売成績を上げた。
彼女は、カローラを売りまくった。
実力で、営業所長にまでなった人だ。
中津川は美しい、恵那は美しい。
何が美しかって、美しい心と、美しい思い出を持ってる人が一杯いる町だからだ。
恵那には、恵那狭と言う観光地がある。
美しいと言うよりは、秋色の景観の中で、憂愁と慕情が、糸を編むように美しい思い出となって、何時までも生き続けている。
それが、恵那峡なのだ。
幸男が青年の頃、あの人が乙女の頃の思い出。
二人は、澄んだ水面の中で、ボートを漕いでいた。
少し休めた手で、恥じらいながら、手を握る幸男。
あの人も、恥じらいながら、幸男の手を探した。
「恥じらいながら、それでも、それでも、恋した人の手を握りたかった。」
と、松本美子さん。
「え、同じ思い出を持っているのか」
と、幸男。
それからは、よく話ができる人だった。
年はひと回り下だけど、頭の切れる人だと思って来た。
「乙女の恋は、純情なのよ」
「青年の恋も純情なのだ」
と、車中での会話は続く。
さようなら、奥飛騨の華よ、奥美濃の華よ、中津川、恵那の華よ、花よ。
ありがとう、良き日々を与えてくれた貴女達。
幸男は、この会社を去って行くけれども、松本美子重役の活躍が、美しい思い出にしてくれるだろう。
(了)
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テーマ : 自作連載小説
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