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短編小説・砂に書いた漢字8(了)

短編小説・砂に書いた漢字8(了)



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                                   短編小説・砂に書いた漢字7

                                   
昭和二十年八月九日、岐阜大空襲、八月十四日、ポツダム宣言受託、十五日、終戦。
濃尾平野の西部を走る、活断層帯。断層運動は、何百年、何千年に一度と言われていが、警戒を怠っていいものではない。
さて、それからの正子は、どうなったかと言うと、
父が二十一年の秋、正子と幸子と良子の元に買えってきた。遅い帰還ではあったが。無事で何よりだった。
正子は、しばらくしてから働きにでた。正子はよく働いた。何度か、家に仕送りをしていた。少し遅い結婚ではあったが、子宝にも恵まれたようだ。
詩織といえば、山村は、不破郡は垂井、宮代村の、宮代尋常小学校の高等科に学んだ。この学校は、早い時代から高等科を立ち上げ、教育に力をいれていた。
予定外だったのは、祖父の元を離れ、故郷に戻って来てからである。
父と母が、無理をして、新制高校に行かせてくれたことだった。詩織は、一生懸命勉強した。大学はといえば、昼間、大隈鉄工所で働いて、夜間部で学んだ。三年生の途中で、昼間部に編入になった。会社は、詩織の才能を認めていたから、快く送り出した。学費免除学生にもなった。これらの事は、教授が、詩織の優秀な成績を惜しんで、労をとった結果なのだ。さて、それでも、詩織は、教授が、
「研究室に残りなさい」
と言う助言を振りきって、卒業と同時に、小学校の先生になっている。
何か、熱き思いがあったのであろう。やがて、二年後に大学の研究室に戻った。
さてさて、正子が詩織の存在を知ったのはどうしてであろうか。
ここに古い新聞がある。詩織が講師をしていた頃のことだ。
詩織の書いた随筆、(私の思い出)が、文芸欄に掲載されている。たぶん正子は、どこかでこれを見たに違いない。そんな頃からだ。正子から手紙が来るようになったのは。
あのたどたどしい字と、どちらかというと、平仮名ばかりが目に付く文章。
それでも詩織は返事を書いた。内容といえば、子供が中学校に、入学しました、高校に入学しました。子供が結婚しました。そう、時にはこんな内容もあった。夫婦げんかであるそれもすさましいものだ。これには詩織も困った。何て書いてよいものやら、まったくわからない。
詩織は、色々と、思いを回らしてみる。正子ちゃんにも、あれから辛い事や、悲しい事が一杯あったででしょうねえ。きっとそうに違いない。それでも、こうやって、手紙を書いてくるということは、今は幸せなんでしょうねえ。
「とても、幸福なんだ」
そう、つぶやいてみる。
「私は、どうでしょうか、辛い事や、悲しいこと、一杯あったけれど、今は、幸福なんでしょうねえ」
窓越しから見る空は、どこまでも青く澄んでいた。この大空の下、学生達は煌めいていた。
「学生さん達は、まるで私の、子供のようなものね」
そんなささやきが、そよ風と共に流れていくのである。






(了)
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プロフィール

白浜 砂夫

Author:白浜 砂夫
どうも ”しらはますなお” です。

岐阜県大垣市在住
昭和24年1月11日生まれ
67歳
B型

好きな歌人は、女性では与謝野晶子、男性では、島崎藤村、石川啄木です。詩や和歌や小説を書き始めて20年あまりになります。鹿鳴館を舞台にした小説を書いております。63歳にして一念発起してパソコンを始めました。ブログにも初挑戦です。

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