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短編小説・砂に書いた漢字4

短編小説・砂に書いた漢字4



                                   短編小説・砂に書いた漢字1

                                   短編小説・砂に書いた漢字2

                                   短編小説・砂に書いた漢字3

                                   
文字といえば、ひら仮名の、そのままなのだから。
「これは、幸せになる、幸子の、幸(さち)っていう字だよ」
「さちこ、、、、さちこ」
「そうだよ、幸子ちゃんだよ」
「じゃ、これは」
と、詩織に質問する。詩織うなずきながら
「これはね、良い子になる、良子ちゃんの良(よい)という字だよ」
「よしこ」
そう言って、正子は微笑んだ
「詩織ちゃん」
「正子ちゃん」
二人は、顔を見合った。
「書いてごらんよホラ、この砂の上に」
「うん、書く書く」
後に続いて、正子も指で書いてみる。詩織は昨日、書き方の時間に習ってきたのだった。
当時、三年生といえば、書き方の授業では、仮名と漢字を交えた、一行に三字の六字書きで通していた。四年生になると、一行に四字を書く、八字書きになり、初めて行書を習うようになっていた。
ある著名人が、出版した、自伝記の中で記している。初めて行書を習った時はうれしかった。まるで、大人の仲間入りでもしたような気持ちになった。
正子は、漢字に秘められた父や母の愛を知ったのである。

「教えておくれよ。教えておくれよ」
正子は詩織にすがった。
「うん、うん」
詩織はうなずいた。それからの正子は、友子おばさんちの仕事を終えてから、いそいで帰宅するようになった。幸子や良子の世話をして、砂場のある川辺に向かうのが、常になっていた。正子は詩織が学校から帰ってくるのを待った。詩織は、始めの頃は足取りが重かったが、段々足早に、川辺に向かうようになっていた。詩織も月日を重ねると、教室の黒板に向かう目の色も変ってきた。これは不思議、学校での成績もグングン上がっていった。
正子は正子で、時々は、サツマイモをふかして持っていつた。二人は石の上にすわって、サツマイモを食べた。よく語り合うようになっていた。
「詩織ちゃん、大きくなったら何になる」
「まだわからないけれど、先生になるかもねえ」
「正子ちゃんは」
「私はね、私はお嫁さんになる」
正子は嬉しそうに言った。
最近の正子は、いたって明るい子供になっていた。隣家の豊子おばさんや、好子おばさんも引きずられるように、朗らかになっていった。
正子の家に、中村加代先生が訪問したのは、
一段と明るくなっていった頃のことだった。加代先生は、ブリキ製の煙草盆(たばこぼん)のような硯箱をひっ携げて来ていた。正子は、書き方練習帳を出して見せた。
加代先生は半紙を出した。
「うわー、半紙だ」
正子には、とても半紙を買う余裕などなかった。加代先生が、正子の為に買ってきたのだ。
やがて、学校では、机間指導に力を入れることになった。
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プロフィール

白浜 砂夫

Author:白浜 砂夫
どうも ”しらはますなお” です。

岐阜県大垣市在住
昭和24年1月11日生まれ
67歳
B型

好きな歌人は、女性では与謝野晶子、男性では、島崎藤村、石川啄木です。詩や和歌や小説を書き始めて20年あまりになります。鹿鳴館を舞台にした小説を書いております。63歳にして一念発起してパソコンを始めました。ブログにも初挑戦です。

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