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短編小説・砂に書いた漢字3

短編小説・砂に書いた漢字3



                                   短編小説・砂に書いた漢字1

                                   短編小説・砂に書いた漢字2

                                   
正子の顔を、覗き込む。
「今、はたらく所を探しているんだ」
正子の言葉は、大人の言葉のようでもあった。
「じゃ、学校は」
「学校、もう行けないよ」
正子は泣いてしまった。詩織も一緒になって泣いた。しばらくしてから、正子は近所の雑貨屋<食品、酒類販売を兼ねている店もあった>さんで、お手伝いすることになった。
雑貨屋の友子おばさんはいい人だった。友子の御主人も、出征して一人になっていた。二人は朝、青果市場へ行って、野菜や魚を、リャカー一杯、仕入れてくるのが日課になった。友子はリヤカーを引いた。正子は後ろから、リヤカーを押した。押しながら声を出した。
「野菜はいらんかね。魚はいらんかね」
かごを持ったおばさん達が集まってくる
「正子ちゃん、大根おくれな」
「人参おくれな」
「イワシの丸干しはどうかねえ」
正子はすすめる。
友子の元気な声が、あたりに広がっていく。店に帰るのは、昼の二時過ぎになっていた。
帰るときは、売れ残りの魚と、野菜をもらうのが常だった・
「おばちゃん、ありがとう」
正子には、幸子や良子が、おなかが一杯になって喜こんでいる顔が浮かんでくるのだった
とある日のことだった。
好子おばさんの手伝いを終えて、帰ってきた。正子は、外で幸子と良子の相手をして遊んでいるおばさんが目にはいった。それは、担任の中村加代先生だった。。

「正子ちゃん」
「加代先生、、、、、先生」
「正子ちゃん、元気だった」
心配そうに、正子の顔を、ジット見詰める。その姿は、余りにもやつれていた。
「先生」
そう言ってから、加代先生に抱きついたまま、泣き出してしまった。先生は、正子を少し離してから言った。
「負けちゃだめだよ」
先生は、書き方練習帳を正子に渡した。書き方練習帳というのは、母親が作るものであった。新聞紙二枚に、半紙一枚の割で、和綴じにしたもので、手で携えるようになっていた。
正子は、加代先生につき返そうとした。先生は必死になって止めた。
「それを返すと勉強できなくなってしまうよ」
「だって先生、学校なんか行けないよ」
正子は言う。
「学校を忘れてしまうよ」
加代先生は答える。
「忘れたくない」
そう言って、練習帳を抱きしめた正子。それは、日曜日のことだった。
詩織は、正子を、よく遊んだ川辺に呼び出した。
川にはハエやフナがよく泳いでいた。エビだって釣れた。砂浜にまで川ガ二が来て遊んでいる。詩織は、砂浜で大きく字を書いて見せた。<幸>と<良>という字だった。
「この字知っている」
詩織は、正子に問いかけた。正子にはわからない。
正子には、漢字そのものがわからない。
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プロフィール

白浜 砂夫

Author:白浜 砂夫
どうも ”しらはますなお” です。

岐阜県大垣市在住
昭和24年1月11日生まれ
67歳
B型

好きな歌人は、女性では与謝野晶子、男性では、島崎藤村、石川啄木です。詩や和歌や小説を書き始めて20年あまりになります。鹿鳴館を舞台にした小説を書いております。63歳にして一念発起してパソコンを始めました。ブログにも初挑戦です。

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