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短編小説・美しき魔性の女7

短編小説・美しき魔性の女7



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                              短編小説・美しき魔性の女2

 
                              短編小説・美しき魔性の女3

 
                              短編小説・美しき魔性の女4

 
                              短編小説・美しき魔性の女5

 
                              短編小説・美しき魔性の女6




九条喜一郎に声を掛けてきたものがいた。
「九条の檀那」
と、藤原文夫。以前、助手を務めてくれたことがある、少し年上の、気の良い人物である。
何でも、奥州藤原の末裔と言うのである。
「おう、平泉の藤原君か」
と、喜一郎。如何して彼がここにいるのか理解にくるしむのである。
「如何して、私が此処にいるか、理解に苦しむのでしょう」
と、藤原文夫。場所は金城学院の校門の前であった。
「以前、先生のお手伝いをしてから、そう先生のことが好きになってしまってね。先生のお手伝いをしたいと思い、後を衝けて来たんですよ」
「うーん、助手をねえ。うーん、でも、大した手当てをだせないから、頼むわけにわね」
「気にしなくていいでよ。勤めさせていただきますから」
「それでは、君が困るだろう」
「大丈夫、今度国から金が下りてくるんですよ。三代前のご先祖さまが残しておいた土地が、新しくできる国道にかかるので、国が買い上げてくれるのです。私は全然知らなかったけれども、裁判所って、どうやってしらべるのでしょうねえ。私と言う人物がいるということで、国のものにならず、私にお金が下りてきたのです」
「それは、それは良かった」
と、喜一郎。まじまじと彼を見詰めるのである。
「先生は、例の、藤原北家本流のとか、かの孝明天皇は、この激動の時代をどう生き抜かれるであろうか、とかを、のたまってもらいたいものです」。
「うーん。金が入って来て、余裕ができたな。の給うことが、私には、合ってると言うのだな」
と、喜一郎。
「先生、調べたい事を言ってください。先生」
喜一郎は、万理子の最初の夫が、誰であるか、
「藤原君、お願いできるかねえ」
「お安い御用で」
と言って、彼は、喜一郎の元を去って行ったのである。
喜一郎は、藤原さんを見送ったあと、近くの喫茶店に入っていった。
万理子の最初の夫のことは、藤原さんに任せてみようと、 そう思うようになってきていたのである。喫茶店の窓越しから見る街路木、風に任せているようでも、根は確り大地に張っている。木々は如何してこんなにも強く生きられるのか。
「生きる強さを持たねばならないなあ」
と、呟くのである。喜一郎は、変に大人びて、子供の頃、仏門に入って生きねばならない子供だと考え、育てられた林家では、よくお経を上げていた。
よくお経の上げる子供ではあったが、感心はされなかった。
山内家の、富子の義理の姉、政さんは先妻が亡くなり、後妻にきていた。
政さんは、岐阜の神官の家の出で、美濃の山内総家では、女中をしていたらしい。
喜一郎は、政さんが嫌いだった。二人は、愛とはかけ離れた、憎しみ合う仲でなければならなかったのか?
それは、万理子と、夫との関係でもあるような、想像の元になっているのである。
「この子は、内では扱いかねます、育てかねます、と言って、伊藤家から押し付けられた」
と、私に嫌味たっぷりに、くどくど言うのである。何処にも嫌われて、生きるに生きられない子供であったが、養母、富子が、喜一郎を育てたということは、生を与えたということであろう。養母、富子を愛し、政さんを心底憎んだ。愛と憎しみの間{はざま}、苦しみながら生きた喜一郎。それは、万理子、安田万理子と、義母と夫との愛と憎しみの間でもあったのかもしれない。一人で入る喫茶店には、想像を廻らすには良いところうなのかもしれない。
コーヒーが美味しくてたまらない喜一郎。それは、最近明るくなった万理子の所為だろう。
万理子も又、生き抜くことの重たさと、素晴らしさを知ったのであろう。
そんな万理子に、再度活躍するときが、刻々と迫ってきていたのである。
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プロフィール

白浜 砂夫

Author:白浜 砂夫
どうも ”しらはますなお” です。

岐阜県大垣市在住
昭和24年1月11日生まれ
67歳
B型

好きな歌人は、女性では与謝野晶子、男性では、島崎藤村、石川啄木です。詩や和歌や小説を書き始めて20年あまりになります。鹿鳴館を舞台にした小説を書いております。63歳にして一念発起してパソコンを始めました。ブログにも初挑戦です。

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