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短編小説・美しき魔性の女6

短編小説・美しき魔性の女6



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                              短編小説・美しき魔性の女2

 
                              短編小説・美しき魔性の女3

 
                              短編小説・美しき魔性の女4

 
                              短編小説・美しき魔性の女5




喜一郎は考えた。
万理子はどんな女なのか?
知らないことが一杯あるような気がするのである。
過去は何所に住んでいたのか?
探偵になったつもりで調べてみるのも悪くはない。
明くる日、喜一郎は旅にでた。万理子の過去を尋ねる旅に、一人旅立っていったのである。
空は青く澄んでいた。万理子の三人の子供は如何しているのだろうか?ふと、脳裏をよぎるのである。まず、万理子が以前住んでいた、名古屋郊外の、尾張旭市に行ってみることにした。高速道路を利用して、瀬戸インターを降りる。カーナビは使わない。嫌いなのだ。カーナビは便利だし、今は大変安くなっていると言う。それでも、喜一郎は拒否している。歴史は常に真実を伝承していくか?そうとは言えない。歴史は、時の権力者によって、戦の勝利者によって捻じ曲げられていくことも有りえるのだ。
真実を知る為には如何すればいいのか。自身の、目と耳と汗を掻いて知ることだと思うのである。カーナビは、勝者の雄たけびにしか見えない喜一郎である。以外な場所、以外な出会い、以外ともいえる発想が、突破口に成って来たのである。
インターを出て、国道Ⅰ55号を衝ききって、左手に中部大学を望むことのできるとこまでくる。其処から左手にハンドルを切って高台を登ってゆく。ニュータウンの高台から、白い街名古屋を見渡たせることが出来たのである。
「へーえー、万理子はこんな良い所にすんでいたのか」
と、溜息をついたのである。万理子が住んでいたと言う家は、高台でも後尾の、角の一番大きな家であった。今は、空き家になっていて、売り家の看板が立っていた。
「万理子、お前は不憫なやつだ」
喜一郎の囁きは、遠く知多半島から流れてくる風にのって、届いたかもしれない。
喜一郎は行かねばならないと思ったのである。遠い過去の日々に聞いた、言葉の数々を頼りに、大学巡りになるかもしれない。万理子は、憧れの、幼稚園や、保育園の先生になる為に、一生懸命調べたのであろう。
当時の喜一郎には、深意や、情熱は、知りたいとも思わなかった。唯、良い大学に行きたいだけの女だと思っていた。喜一郎にとって、万理子は、行きずりの、人生の一ページを飾るだけの女に過ぎなかったのだ。
日本は、ある意味では資格社会であると、喜一郎は思っている。そして、人格よりも肩書き、実力よりも学歴が幅をきかす国なのだ。
喜一郎は、それを、否定も肯定もしないと、そう決めている。事実、人の評価や、将来性を見定めるのはむつかしい。そのことによって、発展し、成熟してきたのなら、結果オーライで良いとおもうのである。
さて、思い出のなかで語っていた、金城大学、南山大学や、愛知学芸大学を見学に行こうと思うのである。金城大学は、金持ちのお嬢さんの行く大学で、南山大学はキリスト教系の私学で、頭の良い子しか入れないの。学芸大学は、国立の教育専門の大学だから、学費がずば抜けて安い、等等、嬉しそうに語っていたあの頃の万理子。唯、大学に入りたいだけの娘だったと、思ってしまっていた喜一郎。見誤っていたのだと、反省もするのである。
幼児教育科に入ったというのは正解であろう。幼稚園の先生は、保育園の先生にもなれるが、保育園の先生は、幼稚園の先生にはなれない。
万理子の人生のドラマのなかで、この頃の事が大きなウエートを占めていたことを、今にして思えば、
「俺って、本当に馬鹿なやつかもしれない」
と、呟くのである。一体、万理子に何があったのか?答えは見えてこない。
車よ、何処までも走ってくれ、走らせようと、ペダルを踏む足にも力が入る。
女は、愛に生きる者であるとは、養母、山内富子に教えられた。
女は愛に生きることも、憎しみを抱いて生きることも、復讐に生きることもできる性を持っていることを、人生経験のなかで知ったのである。
養母、山内富子、結婚してからは林富子、山内家のお嬢様である富子が、喜一郎に語ったことはこう言うことであった。
私は、娘の頃に、行儀見習いを兼ねた女中に行きました。其処の奥様が、まるで私を実の娘のように可愛がって下さいました。奥様が言うには、貴女が、富を求め、金持ちの人と結婚したいと考えるなら、その人と添わせましょう。貴女が名声を求め、名家の人と結婚したのなら、その人と添わせましょう。もちろん、当家で、婚礼道具一式揃えて、当家から送りだしてあげましょうぞ、と言ってくれたと言うのである。そのことは、幼なかった喜一郎にもわかる。まるで、貴女の望むままにと言っているようなものである。
何度聞いても、喜一郎には、そこまで言い切る、名門、名家の奥様の実力におそれおののくのである。
「そこまで、言ってくださるのに、どうしてこんな貧乏な、水簿らしい家に嫁いで来たの」
と、喜一郎は聞いた。
「好きだよ、愛しているよ、と言って下さる、人のもとに嫁いで行くのが、女の幸せなんだと思った」
と、そればっかり言い続けていく。
内心はがっかりしていたのかもしれない。しかし、愛した人に尽くしぬいた人生だった。
喜一郎は、過去も、今も、未来も、苦しみ抜いて生きていくであろう。
女は、愛と憎しみの間(はざま)、如何思い、どう生き抜いていくのか、理解に苦しむ性(性)思っているからである。
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プロフィール

白浜 砂夫

Author:白浜 砂夫
どうも ”しらはますなお” です。

岐阜県大垣市在住
昭和24年1月11日生まれ
67歳
B型

好きな歌人は、女性では与謝野晶子、男性では、島崎藤村、石川啄木です。詩や和歌や小説を書き始めて20年あまりになります。鹿鳴館を舞台にした小説を書いております。63歳にして一念発起してパソコンを始めました。ブログにも初挑戦です。

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白浜砂夫の電子書籍




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