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短編小説・君に心は届いたか10(了)

短編小説・君に心は届いたか10(了)



                              短編小説・君に心は届いたか1


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                              短編小説・君に心は届いたか7


                              短編小説・君に心は届いたか8


                              短編小説・君に心は届いたか9



孝夫が、手紙を送ってから三日後のことである。
この文章は、番組の冒頭から流れ出したのである。
「まさか、信じられない」
と、孝夫は絶句した。真理子に読んでもらいたい手紙であった。
そして、もう一つの報告、それが孝夫を驚かせたのである。真理子が近々、この番組を降りて、親会社のテレビ局へ移動するというのである。テレビでは、新番組を担当することが決まったというのである。局では、どの様な番組を担当させるのであろうか。
孝夫は、想像を回らせずにはいられなかった。
日々は流れて、又又日々は流れていく。
今度は、重ねた月日が人に、自信を与えてくれることが、多々あるのだ。
作家となることを決意したことによって、全ては変っていった。貧乏と、愛と別離という運命に泣いてきた孝夫。それは作家になる為に、天が与えた運命だったのだと悟ったのである。運命を使命に変え、使命を勇気の元として、行動するエネルギーを追い風にして、進んでいったのである。
全ては世界の平和の為に、全ては世界の平和の為に、作家は叫び続けなければならない。それが、作家たる由縁であると思うのである。
孝夫は今、原稿用紙に向かってペンを走らせている。額から流れ出る脂汗。
何とかしなければならないと、戦っているのだ。それでも、孝夫には満足感があった。
無意味に過ごした、長い年月を過て、今は生きているという実感があった。
一文字、一文字に書くことに対する使命と覚悟を持つようになっていた。
かの事件の延長線上にあるものはきっと、古の賢人たちが夢に見た、〔大和〕やまと、平和の王国の文字ではなかったのだろうか。
孝夫は、小説の中で、この様に書いている。〔大和の民族こそ真の民族であると言い切れるとすれば、それは美しい文字と、美しい音声を持っていることに他ならない。その奥底は、思いやりの心と、多様な文化や宗教を許容する幅の広さである〕。
さて、それからの真理子はどうなったのであろうか。書いておきたい。
真理子のテレビ局への転向は、大成功というより、当たったというべきであろう。
一つの賭けであったと思えてならない孝夫である。
正に、意外性と〔美しい魔性〕、作者は、人を牽きつけて止まないスケールの大きな人格、それを、美しい魔性と言いたい。真理子はそういう女性だと思うのである。断わっておくが、真理子は美人ではない。表装的には平凡な、何処にでもいる庶民であり、彼女も語って幅からなかった。だれにでも、
それでも、テレビを見るフアン層を轢き付けてやまないのは、人は姿、形ではないということであろう。孝夫の小説は世に出たのである。そして、人々の注目を引くようになった。のである。自分の書いた小説が、小、中学生の作文の、読者感想文の部門で、一生徒が賞を戴くようなことがあったら、その感想文を読んだ当の作家は、思わず涙ぐんでしまうであろう。これを、作家冥利に尽きるといっても過言ではない。
作家とは、命を削ってでも書かねばならないことがあるからだ。
それから、一年は過ぎたであろうか。二月の十二日。建国記念日の翌日。
孝夫と真理子はテレビ局のロビーで会った。二回目に出した小説が、大衆文学賞の新人賞を戴いたのである。誰にも祝ってもらえない孝夫と、賞であった。真理子は、ニュースを見落としはしなかった。真理子は、待ち合わせの時間に遅れることなく来ていた。
「心は届きましたか」
と、孝夫。
「ああ、あの手紙ね。ええ、多分、きっと」
そう言ってから、プレゼントを手渡すのである。真理子は心の中で誓っていた。今度、上の賞を取った時は、私の番組に出演させてあげると。
さて、孝夫が真理子から、会いたいとの手紙を読んだのは、馴染みの喫茶店であった。まだ無名の、世間に知られていない孝夫では当然なのかもしれない。
それでも、蘭の一種の、シンピジウムが、長い茎を延ばして、白と淡いピンクの色を輝かせて、一緒に喜んでくれているようだった。
孝夫の挑戦は続いたのである。書くことは、孝夫にとって挑戦なのである。自らのうちにある、絶望と弱気心を、無くす為に、唯ただ、書き続けた。
半年後のことでである。新作の小説は、大衆文芸賞の最優秀賞に輝いたのである。
孝夫は、真理子に招かれて、真理子のテレビ番組に出演した。
「マリー、有り難う、」
と、礼を言ったのである。
「いいえ、お礼を言わなければならないのは、きっと私の方かもしれませんねえ」
と、真理子。
「え、如何して」
と、孝夫。
「あなた様から戴いた手紙の数々。それはまるで、私を励ましているようでしたは」
と、真理子は微笑んで言う。
「うん」
と言って暫らく無言の孝夫。アシスタントが、
「先生、お言葉を、お言葉を」
と、催促するのである。孝夫は叫んだ。
「マリー、あなたは心までも美しかった」。





(了)
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プロフィール

白浜 砂夫

Author:白浜 砂夫
どうも ”しらはますなお” です。

岐阜県大垣市在住
昭和24年1月11日生まれ
67歳
B型

好きな歌人は、女性では与謝野晶子、男性では、島崎藤村、石川啄木です。詩や和歌や小説を書き始めて20年あまりになります。鹿鳴館を舞台にした小説を書いております。63歳にして一念発起してパソコンを始めました。ブログにも初挑戦です。

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