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掌編小説・裸の画家1

掌編小説・裸の画家1

(注)この作品は、アレンジ作です。
原作は、平成十四年七月、主婦の友社に投稿した作品です。

二人が始めて会ったのは、平成十三年の十二月の一日。
世間では、師走と言って、騒ぐ時節の始まりであった。
「そうまるで、裸の自分をさらけ出しているみたいで、恥ずかしい気分がしますわ」
と、文子は孝夫に向かって、はにかむ様に話かけていた。
「そうだねえ、画家という、芸術家が持つ宿命みたいなものだろうね」
孝夫は、言葉を返していた。文子の出品作品の、一つ一つをジィッと見詰める孝夫。
文子は今、改めて、彼を招待して良かったと思うのである。
文子は、孝夫が好きだった。画家になる前から、そして画家となった今も、変ることなく、好意を持ち続けてきた。
「こうして絵を展示させてもらっていること自体、自分をさらけ出すしている様のものだからね」
と、孝夫。遠慮なく話すのである。
「そう、自分の人格さえ、見透かされているような、そんな気持ちになる時もあるんです」文子は、チョット大げさなポーズをしながら言うのである。
「案外、的を得ているかもね」
と、孝夫。
「ねえ、孝夫さん」
「文子さん。何?」
「この絵、どうかしら」
「この絵?」
「そうこの絵なの」
「うーん、、、?」
「私の、大の仲良しさんで、この展示会を主催した、同じ会の、副会長を務めている人」
「オイ、オイ、批評かい」
「そう、どうかなあと、思って」
「気になるみたいだね。俺は好きじゃないね。第一、それに、絵画を見る目があるかどうか、自信がない」
「ううーん、そんな難しく考えないで。この絵が、好きとか嫌いとか、そんな見方でもいいと思うの」
と、文子。
孝夫と会話できることが嬉しく仕方がないという風情である。
文子は今まで一度も、孝夫を、美術展に招待したことはなかった。まして、自身の描いた絵画を展示した、展示会に招待したことなど、一度もなかった。孝夫は、寂しい気もしてきたけれど、すこしは心情が、分かっていたつもりである。こうして初めて、招待されてみると、返って不安な気持ちになるものである。人の心とは、不思議なものだ。
文子には、何か思うことがあるのだろうか?きっと、あるに違いない。
しかし、とてもそんなそんな様子は見えない。
文子、不思議をオブラートに包んだような女性ではある。
文子と孝夫が始めて会ったのは、平成十三年十二月、師走も終わりに近ずいた頃のことである。
税理士養成専門学校で、机を並べた時からだ。
十二月の中頃といえば、盛夏、お盆前に行われた、税理士試験の、合否の発表がある。
孝夫は、この試験の簿記には合格したが、法人税には受からなかった。働きながらの独学に限界を感じたのである。この専門学校には、先に、文子が入学していた。二人に、どんな交際が合ったのだろうか?やがて、深い関係になっていくのである。
「どう、勉強は進んでいる」。
「ああ、文子さんは」
「ううん、進まない」
「如何して、何か事情でもあるの」
「ううん、私には合わないみたいだから」
その言葉は深刻なものではなかった。文子は税理士事務所に勤めながら、夜、この学校に来ていたのだ。事務所には、一年勤めた後、退職している。
文子がこの学校にいたのは、半年に過ぎない。二人は短い期間のなかでめぐり合い、やがて、深い関係になっていったのである。
文子は、短大に行っていたころから、洋画の勉強をしていたらしい。
「高校では、それがねえ、美術クラブにいたの」
と、文子。
「へえ、美術クラブねえ?その人が経理を学ぶ」
と、言う孝夫。理解に苦しむのである。
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プロフィール

白浜 砂夫

Author:白浜 砂夫
どうも ”しらはますなお” です。

岐阜県大垣市在住
昭和24年1月11日生まれ
67歳
B型

好きな歌人は、女性では与謝野晶子、男性では、島崎藤村、石川啄木です。詩や和歌や小説を書き始めて20年あまりになります。鹿鳴館を舞台にした小説を書いております。63歳にして一念発起してパソコンを始めました。ブログにも初挑戦です。

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