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掌編小説・哀愁の春日村3(了)

掌編小説・哀愁の春日村3(了)


                                        哀愁の春日村1


                                        哀愁の春日村2



しばらく歩き回って、郷土の物産品を見ていたら、
「あら」
「あら」
二人とも、長いこと会っていなかっみたいに、見詰めあった。
「この人は、お母さんですね
「はい、母です」
二人の笑顔とは裏腹に、孝夫は、お母さんという視線が、何故か辛かった。
「二人のお子さんは、如何されたのですか?」
「二人は、叔母に預けました」。
「そうですか」
と、孝夫は言う。そこには、手が離れた安堵感があった。
「焼き鳥二本、百円は安いから買おう」
「私も五本買おう。二百円は、お値打ちだからね」
と、彼女。並んで買うのも、悪くないみたいであった。そこには、孝夫と二人で語り合える、小さな時間が有ったからだ。今、孝夫は寂しくないと思った。彼女の目も、私は寂しくない・・・と、そう言っているように見えた。
暫らく時間を過ごしていると、点々と雨音がしてきた。やがて本降りになっていくのである。孝夫と彼女は空を見上げた。
「降ってくるみたいね」
「そうね」
「俺、少し早いけど帰ろうと思う」
「残念だわ。私も、もう少ししたら帰ります」
彼女は、お母あさんの方を見て、断定的に言った。
「もう少しぐらいいたら」
と、止めるお母あさん。帰したくない気持ちがありありとしている。孝夫は、三人の娘の手を、一人一人握り
「さようなら」
を、言った。
「うん」
と、言ってうなずいたのである。孝夫は、足早に駆け出していった。もう、とっくに忘れていた、亡くしてしまつていた家庭。家族愛。そして、十年を過ぎた今も、娘よ、私を許して、孫に合わせておくれと、願うのである。
孝夫は、少し走ってから立ち止まり、振り向いた。そして、何度も何度も手を振っていたのである。彼女も、まるで答えるかの様に、何度も何度も手を振ったのである。
孝夫は、呟いていた。
「唯、ひと時の愛でも良いんだ。これは、小さな愛かもしれない。小さな愛、でも良いんだ、今、俺は、幸せなんだ」
孝夫は、もう一度手を振った。そして足早に掛け出して行ったのである。



(了)

ご愛読有り難うございます。寒い季節です。風をひかないよう、くれぐれも。
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プロフィール

白浜 砂夫

Author:白浜 砂夫
どうも ”しらはますなお” です。

岐阜県大垣市在住
昭和24年1月11日生まれ
67歳
B型

好きな歌人は、女性では与謝野晶子、男性では、島崎藤村、石川啄木です。詩や和歌や小説を書き始めて20年あまりになります。鹿鳴館を舞台にした小説を書いております。63歳にして一念発起してパソコンを始めました。ブログにも初挑戦です。

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