スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

掌編小説・哀愁の春日村2

掌編小説・哀愁の春日村2


                                        哀愁の春日村1



生母よ、育ての母よ。
亡き母の存在は、遠い過去のことなってしまったけれど、今も心の中に生きている。又、将来も生き続けるであろう。
でも、あの人は、あの人は、今は思い出の人、かりそめの恋のように、まるで淡雪のよう、儚く消えていく、そういう人なんだ。ああ---あの人は、あの人は、それは、囁きとも、呟きともとれる、言葉の数々であった。
孝夫にとって、ひと時の、幸せな日々が、今は空しかったのであろう。
さらに、水際に出て自問していた。
「私は、如何してこんなにも、孤独なのでしょうか?」
「私は、如何してこんなにも、さびしい男なのでしょうか?」
清流は答えてはくれなかった。
孝夫にとって、この日から、この春日村は、愛しの村になったのである。
駐車場に車を止めて、足速に会場に向かっていたら、
三人の幼子を連れた、一人の女性に出会った。
どちらからというわけでもなく、話し掛けていた。
「何処へいかれます」
「もりもり祭りに行きます」
「私も行くんですけれども」
「あら、まあ、一緒ですわねえ」。
二人は、顔を見合わせて、微笑んでしまったのである。
語り合っているうちに、彼女が一緒の、大垣から来たことを知り、尚更、いろいろ聞いてみたくなった
「今日は、御主人さんは?」
「主人はいません」
孝夫は、その言葉に、何とも言えない、寂しさを感じた。直感的に、この人は、主人と離婚したのだ。そうに違いない。
新しく出来た橋まで来て、彼女を見詰めながら言った。
清流を指差し、
「きれいな水でしょ」
「本当、きれいな水ですねえ」
二人は、しばし見とれていた。
会場のある、春日中学校は、彼女の母校であり、その片隅で、母が待ってくれていることも、会話の中から知ったのである。
「子供の手を引いてくれませんか」
「私でよければ」
「お願いします。子供って、どこへ飛び出すか、わかりませんから」
孝夫には、その、話すところがよく理解できた。彼にも子供がいた。そう、子供のいる夫だったから。
「私に、三人の孫がいるんですよ。三人とも男の子なんですけれども」
「あら、私の子供は、三人とも女の子」
そう言ってから、二人は、思わず笑っていた。
「会う事も許してくれない、まるで遠い存在の娘と孫なんです」。
「そう、そうなの」
「歩くっていいことですね。車では見られないものが、見られるみたいで」
と、彼女。
「そうねえ、歩くって、のんびりしていて、それに、健康に良いみたいね。でも、子供って、やがて疲れてしまって嫌がるみたいですよ」
と、孝夫は言う。もしそうなったら、背中におぶってやってもいいと思った。
急な坂を登って行くと、中学校が見えてきた。三階建ての校舎である。向こうから近づいて来た、若い女性が、彼女に話しかける。懐かしさが一杯のようである。同級生なのだろうか?
積もる話もあるでしょう。田舎のことだから、先々で、多少は、同級生に会うこともあるだろう。
「俺、体育館の方に行って、郷土芸能でも、見てきますから。そういうのすきなんです」
「あら、じゃあ私、お母さんの所へ行ってきます」
何とはなしに、別れ惜しそうに、二人は遠ざかって行った。
体育館では、臨時の舞台が作られていて、合唱や、マジックショーを楽しんで見たりもしていた。時々は、屋上を見詰めたりして、彼女は今頃どうしているか、気に揉んでいた。
無料の春日茶をよばれた後、お茶席にも行った。代金百円を払った。この人は、きっと華道の先生なのでしょうねえ。女子中学生が、抹茶を持って来た。何故か無口になっている女生徒の傍で
「どうぞ」
と言ってくれたのです。
着物姿の先生、それも又、美しいと、孝夫は思った。
スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

白浜 砂夫

Author:白浜 砂夫
どうも ”しらはますなお” です。

岐阜県大垣市在住
昭和24年1月11日生まれ
67歳
B型

好きな歌人は、女性では与謝野晶子、男性では、島崎藤村、石川啄木です。詩や和歌や小説を書き始めて20年あまりになります。鹿鳴館を舞台にした小説を書いております。63歳にして一念発起してパソコンを始めました。ブログにも初挑戦です。

最新出版物
白浜砂夫の電子書籍




ランキング
投票お願いします。
にほんブログ村 ポエムブログへ


人気ブログランキングへ



ブログランキング

ブログ王

アクセスランキング
[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
3721位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
小説・詩
86位
アクセスランキングを見る>>
砂夫ちゃんカウンター
最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

検索フォーム
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。