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掌編小説・哀愁の春日村1

掌編小説・哀愁の春日村1



あれは、いつの頃のことだろう。もう、十五~六年前のことになるだろうか。
妻子と別れたのが二十二年前の事であるから、それから十年後のことであろう。
一人暮らしに、慣れてしまったというより、慣れざるをえなかったということではある。
孝夫が、今は揖斐川町に編入された、春日村にある森の文化博物館を訪れたのである。
それが、もう遠い日の事なのに、昨日の事のように、懐かしく思い出されるのである。
大垣を出発して、春日村役場や、中学校を通り越して、さらに、坂上っていく。
長者平スキー場を越えて、長者の里に辿り着く。
迫り来る山脈と森林に抱かれて、ひっそりと、安らか眠っている。
この長者の里に、彼、孝夫を入れて、何人の人が来ていることだろうか。
数えられる程の人数しかいないみたいだった。
玄関に近づけば、近づく程、それを、押し止めようとする何かがあった。
迫りくる、木々と草花、入る事さえ躊躇われた、小さな洋館が、孝夫には悲しかった。
そう、孝夫の心は病んでいた。長い孤独との戦いが、心を病ませてしまったのである。
全てが、悲しいものに思えたのである。

今日は十月ニ十一日。日曜日である。
何の日でしょう。彼は鏡に向かって、自問していた。
急いで、外出着に着替えて車に乗る。向かう所は、唯、一直線である。過日の新聞記事が、目に留まったのである。
第一回、春日村もりもり祭りに行ってみたくなったのである。
車を走らせながら、山々を見詰めていた。踊る心を必死で抑えようとしていたのだ。
孝夫は、まず森の文化博物館を訪れてから、しばらくして、同じ村にある、細石(さざれ石)公園を、訪れたりもしている。
迫りくる山脈と森。切り込んだ岩礁と、何処にもない清流、それは生まれ出ずる清水と言っても良いだろう。源流を訪ねて、来る人もいるのである。
彼の心は病んでいた。長い孤独生活との戦い。かりそめの恋、そんなの悲し過ぎるぜ、清らかな恋、そんなのもっと悲しすぎるぜ。恋なら、一直線にゴールまで突走しれるものを。森と清水だけが、病んだ心を、優しく慰めてくれるような気がしていたのである。
この公園は、博物館にもまして、人影がなかった。守人の村人が、二人いるだけだった。
今の彼には、最も相応しいところのようだ。
世間から、逃がれるように、隠れるように生きてきた孝夫。誰にも知られず、誰にも見られず清流を眺めるように、語り掛けていたかったのであろう。
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プロフィール

白浜 砂夫

Author:白浜 砂夫
どうも ”しらはますなお” です。

岐阜県大垣市在住
昭和24年1月11日生まれ
67歳
B型

好きな歌人は、女性では与謝野晶子、男性では、島崎藤村、石川啄木です。詩や和歌や小説を書き始めて20年あまりになります。鹿鳴館を舞台にした小説を書いております。63歳にして一念発起してパソコンを始めました。ブログにも初挑戦です。

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