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短編小説・永遠の処女13

短編小説・永遠の処女13


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日々は流れて、卒業式の日を迎えた。
人は祈りの中から何を見るのであろうか。
祈る心から何を得るのであろう。真海は、ベッドに腰掛けていた。窓際に向かって両手を合わせている。
「あの人は私のもの。永遠までも連れて行きたい人」
ささやくように、問いかけてみても、返って来る言葉はなかった。
しとしとと降る雨。三月の雨は涙を誘い、風さえも泣かずにはいられない。二人の歴史さえも、あっけなく消し去っていくのだろうか。
窓越しに見ゆる君の面影。流れては浮かび、また、流れていくあなた。窓ガラスに手を当てて触れてみる。あなたが来られない今日という日。それは真海にとって、やがて訪れる
別離の始まりだろうか。
今頃、孝夫さんは、卒業式の会場である体育館にいるはず。
りりしい制服姿が浮かんでくる。何で、こんなにも輝いているの。
あなたと私の卒業証書。あなたの手に握られていることが、とっても恥ずかしくなってしまう。まるで、あなたに抱かれているみたいで。お願い、そっと優しく抱きしめてほしいの。
あなたの、手の温くもり。その手で引き寄せられたら、私はきっと泣いてしまうでしょうね。真海の心を歌う。
雨はやがて小降りとなり、涙の後にはまぶしい陽光がさしてくるのだった。
卒業式も見事なまでに、完璧な出来映えで、終えることができたのである。
この後、卒業証書総代を務めた、学級委員の和夫をはじめ、大学へ入学するものと、都会に出て就職するものと、地元で働くもの達とに別れていったのである。
和夫は、京都大学に入学した。真海との思い出がある古都が、なぜか良かったのであろう。
幸子は、地元の教育大学に入学した。
「故郷、去りがたし」
幸子は、万感の思いをこめて孝夫に言ったのである。
「和夫って、以外と純情なんだ」
と孝夫。
「あなたも純情よ」
と幸子。
少し色っぽくて大人の女になりつつあった。

卒業式の翌日、二人は町の中心街にある喫茶店でおち合ったのである。
「真海が待っているから、もう出ようか」
「そうねえ、また会ってくれる?」
「ああ良いよ、幸子が入学するまでの間ならね」
「そうね、そうよねえ。ありがとう」
幸子の笑顔が、青空をバックに写し出されて輝いていた。

あれから、少し時は流れた。
久しぶりに訪れた病院。別に変っている様子もない。
孝夫は、少しホットしていた。通りかかった看護婦さんに会釈をして、病室に入った。
「ご無沙汰していてごめんよ」
申し訳なさそうに言う。
「あら、そうね」
真海も気まずそうに言う。孝夫は背広を脱いだ。初めて見る彼の背広姿。
なんて凛々しい青年になったのであろう。真海は、彼から受け取った背広を、思い切り抱きしめた。抱きしめた後、衣紋掛けに吊るすのだった。
「ごめんよ、まだ仕事に慣れなくてね」
こんな言い訳しかできない孝夫。真海は、彼の胸を思いきりたたいた後、彼に身を任せていった。涙が止め処もなく溢れて来る。手紙の一つも出さずに過ごしたことを詫びる孝夫。
「ごめんよ。本当に御免よ」
そう言った後、もう一度強く抱きしめた。
窓際に立てば、藤の花が咲いているのが見える。藤棚は満杯である。
蔓を伸ばして咲き誇っている様子がうらやましく見える。
二人はただ黙って見詰めていた。
それは、卒業式の翌日。孝夫と幸子が連れだって訪れてからしばらくしてのことだった。

そして、ほんの少し時は流れて、季節はといえば、梅雨に入った頃のことである。
午後の、陽射しの強い時間の中で、なにか落ち着いた気分が真海にペンをとらせていた。

ペン先が走る。お母さん、私が死んでもどうか悲しまないで下さいね。
私を育んでくださったお母さんに、なんのお返えしも出来ないで、大変心ぐるしく思ってまいりました。そのことを今のうちに書き留めておきます。
お母さんが、以前病室で語って下ことに、私は答えなければならないと思います。
お母さんに涙は似合いませんよ。母はどこまでいっても気強くなければいけないのです。
私の不幸を嘆いていたお母さん。私は本当に不幸な娘だったのでしょうか。
私には孝夫さんがいます。それに、和夫さん、幸子さんや、クラスメートから、お手紙をいただいています。
夏休みには必ず、会いにいくから、盆休みには会いにいくから、という嬉しい手紙をいただいています。こんな良いクラスメートに恵まれて、とっても幸せだったのです。ありがとう、愛しきクラスメートよ、麗しの青春よ。わが思いは、永遠に続いて行くでしょう。
さて、この後は、天国から孝夫さんを見守って行きます。孝夫さんが災難にあう時は、私が盾になり、あの人が病気の時は看護婦になり、あの人が仕事で家を留守にしている時、大切な妻や子供に、大難が起きたなら、私は、天国から急降下して救助に駆けつけるのです。私が死ぬということは、孝夫さんを、天国から見守る立場になるということなのです。これ程の喜びが、外にあるでしようか。
そして私は、あの人がもう一度、私の心に寄り添ってくる日を、気長に待っています。
人の世は移ろいやすく変れども、我が心は、決して変ることはないでしょう。
では、お母さん、毎日を健康で朗らかに過ごされますことお祈り申し上げます。

追伸、お父さんにも、どうかよろしくお伝えくださるよう、お願いして筆を終わらせていただきます。

真海より。

真海に、ペンを取らせたものは何であったのであろう。
来るべきX日を悟った?それもあるだろう。
ここは、やはり、孝夫の、地元で就職したことと関係しているとみてよさそうだ。
「私の為に」
「最後まで、傍にいてやりたいんだ」
病室での会話が、脳裏をかすめて離れなかったのである。
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プロフィール

白浜 砂夫

Author:白浜 砂夫
どうも ”しらはますなお” です。

岐阜県大垣市在住
昭和24年1月11日生まれ
67歳
B型

好きな歌人は、女性では与謝野晶子、男性では、島崎藤村、石川啄木です。詩や和歌や小説を書き始めて20年あまりになります。鹿鳴館を舞台にした小説を書いております。63歳にして一念発起してパソコンを始めました。ブログにも初挑戦です。

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白浜砂夫の電子書籍




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