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短編小説・永遠の処女10

短編小説・永遠の処女10


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                                         短編小説・永遠の処女9



院内に戻る二人。担当医の朝倉先生は、真海の手をそっと毛布の奥に返した。
病状の悪化が、予想内であることに安堵した。
何て、生命力のある娘さんなんだろう。
「先生」
「なんですか」
「女性の魅力は、どこにあるのでしょうか?」
真海は、先生に質問した。
先生は、急に笑顔になった。
「誰か、好きな人でも居るんですねえ」
真海は、恥じらいながらも否定はしなかった。
「醜い、女性の魅力と、清純な乙女の魅力と、そう、二通りあるように思う」
「醜い女性って?」
「それは、仮定的に言ったのだけど、そうだねえ、子供を産んだ女性、社会で働いている女性ってことになるかなあ」
真海はしばし考えた後、
「では、心の美しいのはどちらでしょうか」
朝倉先生は、ハッとした。
「果たして、清純な乙女に、美しい心はあっても、思いやりの心はあるのだろうか?」
「思いやりの心って?」。
どこか、陰りのある言葉になってきた真海。
「そうだねえ。相手の人生を考えてやることかなあ」
と朝倉先生。
真海は、意味が飲み込めないでいる。恋人の一生を縛る愛の終末。
それは何か。
そんなことが許されて良いのだろうか。
朝倉先生は常々、彼女は自殺することもありえると思っていたのだ。
人の心は、脆く弱いものである。しかし真海は、想像を越えた女性に成長しつつあった。
死と向き合い、苦しみ悩んだ末、何かを摑みつつある。愛する人達の行く末、お世話になった人達の未来。案じる様になっていたのである。
「先生、命の有る限りあの人達を見守っていたいのです」
その言葉には、真実が込められている。
「ありがとう。皆に代わってお礼を言います」
朝倉先生の苦悩は、一瞬の内に消え去って行ったのである。

昭和五十年代も中頃、中秋の良き日。
この町で、仏教哲学大講演会が開かれている。これは、別に物珍しいことではない。
この町では、文化事業に力を入れて来たから、今日に至るまで、多くの人材を輩出して来たのである。
真海は、町の中心街に、買い物に出掛けて来たのだった。
許された短い時間だった。
三々五々人々は集まってくる。一つの流れに押される様に、会場に入って行ったのだった。凛々とした講師の声が伝わってくるではないか。
真海は、身を正して着席した。
人間の、この世での生は、唯一度のものと考えるならば、死への恐怖は、激しく深刻なものになり勝ちである。
仏法の、深き生命感である、
「三世、永遠の生命」
と言う考えに立てば、死は全ての終わりではなくて、新たな生『過去、現在、未来』の「未来」への旅立ちなのである。
まるで、明日への活力を得るために、睡眠を取り、リフレッシュして、朝を迎える様なものである。
講師の話は、淡々と続いて行ったが、実に解り易い内容だと、真海は感じ取っていた。
仏法の奥義を知ること、仏法の真実に迫ること、それも、今の私には必要なことかも知れないと思うのである。
愛する人達の為にも、私自身の為にも、もっともっと長く、価値ある日々を送りたい。
それが、許されない真海である。
少し涙がこぼれて来た。
真海は質問した。
「先生は先ほど、楽しき死、嬉しき死、歓喜の死があるはずだと、話しておられましたね」
「ハイ、そうです」
「私は、今を生きています。だから、楽しき人生、嬉しき人生、歓喜の人生を生きていますと言いたいのです」
真海は、質問したものの、自責の念に駆られてしまった。
「良く、質問してくださいましたね。その勇気を称えたいと思います」
講師は、壇上から深々と頭を下げた。
「だって私は今、恋愛をしているから」
と真海。
聴衆の中から笑い声が聞こえてきた。
講師は、大きく頷いた後、
「あなたの、愛する人達への思いは、只事ではないということです」
真海は頷いた。
「その愛は、他人ながら、羨ましくも、見事だと言っておきます」
座は静まり返って行った。
「生は表であり、死は裏、そんな言い方も、出来るかと思います。表裏一体ということでしょうか」
座はシーンとして、咳をする人もなし。
「あなたの、愛する人達への、熱き思い。それが歓喜の人生であると言われるのなら、それで良いと思います。それも、価値ある日々を生きていることになるのでしょうねえ」
真海は、席を立って御礼を言ったのである。
「あ、そうそう、もう一つ言っておきたいことがあります」
「どういうことですか」
「生命(生命体)には癖とか、傾向性があって、あなたは、来世もその先の世まで(永遠)、
恋に輝き、愛に煌めく人生を送ることが出来るでしょう」
ありがとう真海、よく質問してくださいました。仏法の真髄は、質問してくださった人の、人格と志で決まると言っても過言ではないと、そう考える講師であった。
これは、講師から真海へのプレゼントと言っても良いだろう。
生きるのだ、真海。命ある限り。永遠の愛のために、永遠の愛が存在することを証明するために。真海、命ある限り、生きて生きて生き抜いていくのだ。
それは、永遠の愛への階段を上っていくことになるのだから。
真海はといえば、ただ、黙って手を振るばかりだった。
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プロフィール

白浜 砂夫

Author:白浜 砂夫
どうも ”しらはますなお” です。

岐阜県大垣市在住
昭和24年1月11日生まれ
67歳
B型

好きな歌人は、女性では与謝野晶子、男性では、島崎藤村、石川啄木です。詩や和歌や小説を書き始めて20年あまりになります。鹿鳴館を舞台にした小説を書いております。63歳にして一念発起してパソコンを始めました。ブログにも初挑戦です。

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