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短編小説・永遠の処女7

短編小説・永遠の処女7


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                                         短編小説・永遠の処女6



音楽部の指導から帰って来た、北原先生も、事情が飲み込めずに、びっくりするばかりであった。

弥生の三月を最近にした末の土曜日のことである。
真海と幸子は連れ立って、隣町に来ていた。この町では、社交ダンスが盛んであった。
真海は幸子に誘われて、渋々来たのだった。
この日のダンスホールは、多分にざわついていた。ほの暗い奥をゆっくりと見渡せば、妙齢の美人と踊っている、貴公子がいるではないか。
真海は、シンデレラ姫の物語りに出てくるお城の王子様だと思った。
飛び入り参加、歓迎の町らしい。大都会、名古屋から来た大富豪の子息のようである。
しばらくして、その王子様が真海を見つけると、パートナーの手を振り切って、真海の前に立ちはだかったのである。
「一緒に踊っていただけませんか」
そう言ってから手を差し出す彼。
真海は、震えながらも、彼と踊りの輪の中に入っていった。
「いやぁ、とても上手ですねえ」
これは、社交辞令なのか?下心があるのか?どちらだろう。
「あら、そんなことありませんわ」
恥ずかしさで一杯になる。
「ここへは、何度か?」
「いいえ、初めてです」
「え?始めて、信じられない」
王子様は小声で言った。
「本当です」
「うーん、このうまさは天性のものとしか考えられない」
しきりと感心するのである。
「まあ、恥ずかしいですわ王子様」
彼を見詰める真海。
「私が王子様?皆は、御曹司様と言っているけれども」
彼は笑い出した。
真海は真顔で、
「御曹司様ですか?」
その時の可愛いらしさといったら、もう、たまらないのである。
彼は急に抱きしめた。
「王子様でいいんだよ、今日だけのね」
「あら、王子様。私、私はいけませんことよ」
真海はやっとのことで振りほどいたのである。
御曹司様は、振興財閥、大蔵家の三代目に当たる。海運、陸運、紡績、送で解け物資輸れど印刷、ホテルの、五つの上場企業を翼下にもつ、戦後成金である。
祖父は、戦前紡績工場を経営していたが、戦後二代が、沈没をまぬがれた中古船舶を買ったことから、運が向いてきた。
物資輸送で、一山あてたのである。この御曹司様、何を思ったか、名古屋から一人、知多半島へのぶらり旅に出たのであった。ふと立ち寄った小さな町、そんな町で、最高級車のキャデラックは、目立ちすぎたようである。
昼間の中心街は、彼の後に続く女性達で賑わっていたのである。
「色男だねえ」
「プレイボーイだろうか」
ひそひそ話しも何のその、一向に気にする様子もない御曹司さまだった。
そして夕方を迎えたのであった。やがて、多くの視線が真海に向かった。
真海は憎しみの目に耐えられなくなった。
「私、私帰ります」
「どうして、俺がきらいか。夜は長いぜ」
「だって、冷たい視線が」
「俺の・・・」
真海は涙に濡れた顔面を手で覆った。
「私、私は悪い女」
「君が悪い女?どうして」
段々語気が強くなってくる。
「好きでもないのに、好きでもないのに、抱きしめられてしまったから」
真海はまた泣いた。
「抱きしめられたぐらいで泣くのか」
「・・・」
無言の抵抗をする真海。
御曹司様は、両手をかざして、
「オーノー」
あきれ果てて、言葉にもならないという態度である。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
と言ってダンスホールを飛び出して行った真海だった。
慌てて追いかけて、ダンスホールを出た彼。
「送って行くよ」
少し考えた後で、
「一人で帰ります」
「どうしてなんだ?」
「好きな人でないと、全てに落ち着きが無くなってしまいうの」
差し出した手を振り払う真海。
「そう、好きな人がいるんだ」
「ええ」
「純情なんだね」
御曹司様の寂しそうな言葉が、今夜は特別に合っていたようである。
満天の星空は澄み渡り、帰り道を皓皓と照らしてくれたのである。星雲様は、真海を優しく守ってくれたようだ。

三年生の春は、少し遅い春となったようである。
由美子先生は、本校に戻っていった。
後任の岡田先生は、未だに着任されないでいる。
子供の出産で少し後れたのだ。由美子先生から、引き継いできたことは色々あったようである。岡田先生は着任の日、真海の机の横に立っていた。
心が清らかで、何のわだかまりもない人柄なんだ。由美子先生の言っていた通り、孤高ではあるが、それを越えて至高の存在なのだ。存在すること事態が奇蹟といってもいい。
「今日は顔色が、とってもいいですねえ」
「あら、先生、初対面ですけれど」
真海は、微笑みを送りながら言った。
何て素敵な笑顔なんだろう。
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まとめtyaiました【短編小説・永遠の処女7】

短編小説・永遠の処女7                                         短編小説・永遠の処女1                     ...

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プロフィール

白浜 砂夫

Author:白浜 砂夫
どうも ”しらはますなお” です。

岐阜県大垣市在住
昭和24年1月11日生まれ
67歳
B型

好きな歌人は、女性では与謝野晶子、男性では、島崎藤村、石川啄木です。詩や和歌や小説を書き始めて20年あまりになります。鹿鳴館を舞台にした小説を書いております。63歳にして一念発起してパソコンを始めました。ブログにも初挑戦です。

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