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短編小説・永遠の処女6

短編小説・永遠の処女6


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                                         短編小説・永遠の処女5



孝夫は真海の肩を揺すった。北原先生はためらいなく決断を下した。
救急車が駆けつけたのは、その後瞬時の事だった。これは分校始まって以来の出来事なのである。真海は学校の歴史に名を残したことは間違いない。
三日ほど休んだ後、真海は元気よく登校して来た。倒れた翌日の放課後には、クラス委員の和夫と、孝夫が見舞いに訪れている。
あくる日には、幸子が友達をつれて訪れている。皆に心配を掛けたことを、ただただ、詫びる真海だった。
「真海が心配を掛けさせるなんてね」
ありえないことだと強調する幸子。
「クラスメートの心配ばかりしているものね」
友達も相槌をうつ。
この出来事は、真海とクラスメートの間に、友情という素晴らしいものを生んだのである。
超秀才で、超美人の真海が、一歩下がったことによって得たものは大きかったようである。
彼女達が帰った後、母、香織は、真海の病室に入って来た。香織は、一度精密検査をすることを勧めたが、聞き入れることはなかった。
思うことは、早く学校に帰りたい。クラスメートの元へ、孝夫さんの傍へ、帰りたいということだけなのである。
あれから半月が経ったであろうか。孝夫は、香織から呼び出しを受けたのである。
「孝夫さん、力を貸してください」
「私でできることなら」
孝夫は快諾した。
話しと言うのは、二人で力を合わせて、精密検査の為、真海を大学病院へ連れ出そうということなのである。
果たして、真海は納得するであろうか?
病院から戴いてきた一枚の紙切れ、香織と孝夫の心を思苦しくさせる内容であったことは間違いない。
「住友先生、娘はどんな病気なのでしょうか?」
香織は縋るような目で医長の、住友先生を見た。困りきった様子が、状態の重大さを暗示していた。
「何て答えたらいいんでしょうか。うーん、あえて病名を付けるなら、眉目秀麗病と付けましょうか」
「え?」
香織は目を丸くした。
「これは診察を超えた推理の世界のことになるのですが」
推理の世界?意外な事を言う住友医長ではある。
香織は先生の顔をまじまじと見た。何という風貌であろう。
「先生は、アガサクリスティと友達なんですか?」
と香織。
肯定も否定もしない先生。
「私に解けない難病などないのです。真実は私に微笑むのです」
「先生」
「美し過ぎるゆえに、本来その人が持っている寿命をまっとうすることができないのです」
「美人薄命と、よく言いますが」
「長く生きられても、せいぜい一~二年というところうでしょうか」
「それにしては、あまりに儚い」
香織の目は憎しみにみちていた。
「おいおい、私が悪いとかの問題じゃないでしょ」
語気を強めてしまった。
「じゃ、どう納得すればいいのですか」
「人間、美しく生まれ出るということはありえないのです。娘さんは、そう元初より美くし過ぎたでしょうねえ」
問いかけているようでもある、先生の言葉。
「ハイ、真白いまま生まれでたた赤ん坊でした」
生命『生命体』は、個々の汚れや傷を持ってこの世に生まれでてくるものである。その汚れや傷が、個々の、人生模様を描かせ、人生の物語を演出させるのである。
純粋過ぎるというのも、どこかに無理があろうというものである。それが、短命にする原因であろう。
真海の命は、まるで燃えるローソクに一陣の風が吹いて、パッと消えるように死んでゆくのであろう。住友医長は、このように推理したのである。
「美し過ぎるというのは、罪というより悲劇というべきだろう」
住友医長は言った。
美し過ぎるというのは罪なのか?悲劇なのか?
美し過ぎる女性から答えを待たねばなるまい。
香織の嗚咽が診察の外まで流れていく。さて、真海の入院はというと先生は否定的だった。今のところ、学校生活をしていくうえで差し障りになるようなことは考えられないというのである。

そして日は流れて、慌ただしい師走のこと、時間をこじ開けて学校を訪れた香織。自身の胸に仕舞っておくにはあまりにも辛すぎたたようである。
何故、運命はこんなにも不公平なのだろうか?思いは一つであろう。
「由美子先生、娘が不憫でなりません」
先生にすがるような思いだった。症状を説明する彼女にいつもの笑顔がなかった。
「そうですねえ。まだ十七になったばかりですものね」
それから由美子先生は、あまりにも若すぎるを連発するのだった。
「不老不死なんて、大うそですよね」
香織の目から涙が溢れていた。
「不老不死というのは、年をとらない、死なないということではないんです」
宥めるように話す先生。
「先生」
「生命は永遠であると説いている宗教哲学者もいるようです」
と先生。
「永遠ですか」
涙を拭く香織。
「寿命が長いかどうかで、人生の幸、不幸が決定するわけではない。短命の様でも何倍も充実した、価値ある人生を生きた人もいる。そのほうが、私は、永遠への階段を昇っている人のように思えてならないのです」
「人生は不思議なものなんですねえ」
苦るしまぎれの言葉を言う香織。
「ただただ、限りある人生ならば、有意義に、価値的に生きることを願うのみです」
香織は大声で泣き出してしまった。
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プロフィール

白浜 砂夫

Author:白浜 砂夫
どうも ”しらはますなお” です。

岐阜県大垣市在住
昭和24年1月11日生まれ
67歳
B型

好きな歌人は、女性では与謝野晶子、男性では、島崎藤村、石川啄木です。詩や和歌や小説を書き始めて20年あまりになります。鹿鳴館を舞台にした小説を書いております。63歳にして一念発起してパソコンを始めました。ブログにも初挑戦です。

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白浜砂夫の電子書籍




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