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短編小説・永遠の処女4

短編小説・永遠の処女4


                                         短編小説・永遠の処女1

                                         短編小説・永遠の処女2

                                         短編小説・永遠の処女3



日々を重ねて、やがて晦日となる。
「由美子先生、こんにちは」
真海は、小林家の玄関のドアを開けていた。
「あら、真海さん。今日はデートじゃなかったの?」
彼女を冷やかす由美子先生。
「まあ、先生ったらいやですわ」
次に真海は来訪の趣旨をのべた。
樋口一葉について、色々と教えてほしいことがあるみたいだ。真海が、一葉の生き様に大変興味を持っていることは、国語の授業中、受けた
質問から理解していた。しかしこれほどとはおもわなかつた。一葉のどこに引かれたのであろうか。
「先生、なつが世に出るキッカケになったのは」
真海が問いかける。
「なつ、十四歳の頃、萩の家入門が大きかったと思います」
楽しそうにこたえる由美子先生。
「その、萩の家というのは」
「中島歌子が主宰する歌人の集まりです」
話題はどんどん進んでいく。
一葉ほど、社会の矛盾とそれに絡む女性の苦しみや、悲しみ。それを性『さが』というのだろうか?。優美に綴る女流作家はいないだろう。明治を代表する女流作家を表現する時、与謝野晶子は、文学界の貴婦人。下田歌子は怪物。樋口一葉は貞女と述べておこう。性格は一途にして健気である。真海は一葉の性格に似ていると思える。
「ねえ、真海さん」
「先生なにか」
「聞いてもいい」
「どうぞ」
話題はクラス委員の和夫と孝夫の比較に移っていく。
「真海さんは、孝夫さんが好きだって評判になっているけど」
無表情を装って言ってみる由美子先生。
「まあ、先生ったら」
困惑する真海。
「和夫さんて、頭が良いけど、どこかクールすぎるところあるわよねえ」
「冷たく感じられて、近ずきがたいのねえ」
と言った後、うなずく真海。
「孝夫さんて、秀才って感じじゃないけれど、大らかで、優しく包んでくれるような、そんな感じするのよねえ」
先生も大変気に入っているようである。
「そうなのよ、そうなのよ。そんな孝夫さんに参ってしまったの」
真海も同調する。
「あら、あら」
先生は笑った。
笑いのなかに、二人の女性が見詰めようとしているもの、それは、男の純情『一人の女性を一途に思う、純粋なこころ』だったのだろうか?
新学期に入って席替えが行われた。こんな時は教室中がざわめくものである。
見詰める顔と顔。色々の表情が見うけられるのもこの時である。
真海には、孝夫の隣りの席が宛がわれた。真海は嬉しくてたまらなかった。孝夫はというと、照れくさいような、はずかしいような、複雑な表情をしていた。
なんといっても真海はマドンナである。男の子の『憧れの君』なのだ。
孝夫が妬まれるのは当然である。

では孝夫はというと、ちょっとは女の子に人気があったから、真海を妬む者もいた。
孝夫は相当気に病んでいたようだけど、真海はいたって明るい表情のままだった。
きっとこの日からだろう、真海が時々、手作りの弁当を差し出すようになったのは。
その時の孝夫の表情ったらもう、顔を真っ赤にして頭をかいているではないか。
男の子達が二人の周りを取り囲んでしまう。
「だって好きなんだもん」
真海はいたって天真爛漫である。
男の子達もつられて、
「だって好きなんだもん」
おうむ返しに言うのである。
四月といえば新年度。新しい学年になって四―五日をすぎた頃の事である。
真海は孝夫の家に遊びに行った。
「二年生だよ」
と孝夫が言えば、
「一緒だよ」
と答える。
「そうだねえ」
頭をかく孝夫。新しい教科書が真海から孝夫に手渡された。
真海が町の中心街にある書店で購入して来たのだ。
青葉茂る五月三日。
二人揃って遠出した。
「まあ綺麗」
真海は大声で言った。
灯台から遥か遠く、太平洋の彼方を見詰めている二人。青い空に、青い海は似合わない。
燦燦と降りそそぐ光のなかで、まるでオブラートに包んだように海は抱かれているのだ。
「来て良かった」
「真海は俺を誘いすぎる」
文句を言う孝夫。
「じゃ、来てはいけなかったの」
「いや、来てよかったよ本当に」
海の彼方を指差す孝夫。
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まとめtyaiました【短編小説・永遠の処女4】

短編小説・永遠の処女4                                         短編小説・永遠の処女1                     ...

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プロフィール

白浜 砂夫

Author:白浜 砂夫
どうも ”しらはますなお” です。

岐阜県大垣市在住
昭和24年1月11日生まれ
67歳
B型

好きな歌人は、女性では与謝野晶子、男性では、島崎藤村、石川啄木です。詩や和歌や小説を書き始めて20年あまりになります。鹿鳴館を舞台にした小説を書いております。63歳にして一念発起してパソコンを始めました。ブログにも初挑戦です。

最新出版物
白浜砂夫の電子書籍




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