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短編小説・永遠の処女2

短編小説・永遠の処女2


                                         短編小説・永遠の処女1



知多半島の南知多には分校がある。やがて分校に、春紅葉の、花催の頃を過ぎて
やがて、新入生を迎える頃となる。
校内には新入生を迎えて、ピーンと張った糸のような、そんなムードが漂っている。
真海は校庭に佇んで、満開になった桜を愛でていた。新入生にとって、桜はまぶし過ぎる花のようである。
「蕾みの頃は大好きだったけれど、やがて哀れなほどに乱れて散るから、そんな桜を見ると、涙が溢れそうになるの」
桜の木に話かける真海。
「桜よ、お前の散る哀れさが、乙女のような、蕾みの頃を思いださせてくれるから、涙を誘うんだね」
孝夫も桜に話かけた。
「だあれ、あなたは」
少し驚いた表情の真海。
「ああ、俺か。孝夫。山名孝夫っていうんだ」
「ごめんなさい、私、新入生だから」
申し訳なさそうな顔をする。
「一緒だね」
「あら」
二人は顔を合わせて微笑んだ。
「よろしくな」
孝夫は手を差し出した。
真海は少し恥ずかしそうに、
「こちらこそ、よろしく」
二人の手と手が重なり合っていた。
「でも、不思議な人」
真海は笑い出した。
「どこが?」
理解に苦しむのである。
「そうよ、何もかもね。私にとっては」
真海はまた、笑い出した。
孝夫のふくれた顔が、何故か可愛らしいのである。

知多半島は、豊かなる故郷。知とは知恵の豊かさ。多「た」とは幸福の多き豊かさ。
渥美半島と共に、まるで乙女を抱くように三河湾を抱く。そんな、故郷が、真海は大好きだった。忘れられた、美しき大地に今、太陽の光は、燦燦とふり注いでいる。
潮風が柔らかに耳をくすぐる。教室の窓を開ければ、流れくる音のメッセージ。
遥か遠く、太平洋の彼方まで、届けとばかりに、明るい歌声が追いかけてくる。
「歌うことは喜び、心の癒し。声を出せば朗らかになる。それに頭の体操になる」
北原先生の張りのある声。教室中がざわつく。
「音楽って、頭の体操になるんですか?」
質問する幸子。
「脳を刺激することは良いことです。それには、声を出すことです」
真海は不思議な先生だと思った。
「先生、音楽の時間です」
クラス委員の和夫が声を掛けた。
「そうだね、まあついでにもうひとつ言っておこう。声を聴くとその人の健康状態がわかるという」
また、ざわめきが上がった。北原先生は、壇上を下りてピアノの鍵盤をたたいた。それは、
バラードなのだろうか。伝説のなかに秘められた悲劇。永遠の愛を誓う二人の物語のようでもある。あまりにも悲しいピアノの調べに、真海は一敵の涙を流さずにはいられなかった。それは、遠い過去に聴いた私の葬送曲。真海が夢の中で見た叙事詩なのである。愛する人に裏切られ、湖に身を投げる薄幸の乙女が浮かんでくる。なな、なんと見事な手さばきなのでしょう。北原先生にとってピアノは何なのでしょう。恋人それとも愛人。真海はそっと涙をぬぐうのだった。
「真海さん、どうしたのですか」
ビックリしたような先生の顔。
「そうよ、何故かしらピアノが、私を泣かせしまったの」
愁いに満ちた彼女の言葉は、級友を魅了した。
「なんと豊かな感性の持ち主なんだろう。こんな人ははじめてだ」
少し大袈裟過ぎる、ポーズをとりながら、北原先生はほとほと感心したのである。

少し日々は流れる。
白い帽子をかぶり軽やかに飛び跳ねる。後ろ向いては笑顔を振りまく真海。手を振る仕草は何とも愛苦るしい。
まるで夢でも見ているような、緑の草原での一コマ。
山名孝夫は真海からピク二ックに誘われた。どうして俺を?思案してはみたものの答えでてこない。
見る人の心をとらえて離さない美しさに、もう聞くまいと心にきめた。
白い帽子には、黄色いワンピースは似合わない。青く澄んだ空と、緑の草原を駆けめぐるとき、この世のものとは思えない、永遠を観た様な、そんな気分にさせられたのである。
「あらどうしたの、孝夫さん。涙ぐんでいるわ」
真海はと惑った。
「悲しすぎるよ、この美しさわ」
孝夫は語気をつよめて言った。
「悲しい?」
問いかける彼女。
「二度と見ることが出来ないシネマを見ているから」
「まあ、孝夫さんたら、やっぱり不思議な人」
彼女は笑った。
やがて、孝夫の言ったことは現実となっていくのであるが、今は知るはずもない。
自転車は軽快に、起伏を乗り越えていく。
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プロフィール

白浜 砂夫

Author:白浜 砂夫
どうも ”しらはますなお” です。

岐阜県大垣市在住
昭和24年1月11日生まれ
67歳
B型

好きな歌人は、女性では与謝野晶子、男性では、島崎藤村、石川啄木です。詩や和歌や小説を書き始めて20年あまりになります。鹿鳴館を舞台にした小説を書いております。63歳にして一念発起してパソコンを始めました。ブログにも初挑戦です。

最新出版物
白浜砂夫の電子書籍




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