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短編小説・永遠の処女1

短編小説・永遠の処女1

そうね、どんな名前を付けてあげたらいいのでしょうか。
こんなにも愛しくさせる娘には。
その人の名は真海『まなみ』と言う。
少女と呼ぶにはあまりにもふくよかで、乙女と言うにはあまりにも美くし過ぎる。
長い髪が風になびけば、スラリとした長身が、ひときわ際立ってしまう。
通り過ぎれば振り向いて、「君の名は?」と、訊ねた人も居ると言うのである。
「生まれは?」と聞かれれば、遥か彼方に太平洋が一望できる知多半島の高台の一軒家で育ったのである。
遠條真海には、香織という母親がいる。
親に似ぬ子は鬼っ子と言うが、これは真海をふた回り年増にした貞女と書いておこう。
ちっょと涙もろい所が欠点ではあるが、それが又、妙に色っぽく感じられるのである。
真海は一人っ子であるが甘やかされて育ったと言う事はない。
岐阜県と滋賀県の県境に、伊吹山がある。
伊吹山の麓に、滋賀県側の町の部落、春照『みずてる』という部落がある。
いつの頃に作られたのであろうか。
ここに分教場があった。生徒といえば一学級十五名。四年生まで在校していた。
総数にしてわずか六十名そこそこの小さな学校である。
真海の母親香織は、この分教場に近い民家に生を受けた。
幼い頃の香織にとってこの校庭、そう本当に小さな校庭は格好の遊び場だった。
兄や姉のいない香織には、この学童たちが兄姉のようだあった。
「ねえ、お兄ちゃん」
と言って甘えても、誰も叱りはしない。
手を引っ張ってブランコに連れて行っても、困った顔をしてもイヤとは言わない。
幼かったけれど、人を慕う心は満ち溢れていた。
香織が以前真海に語った事がある。
「どうして、あんなにも人が愛しく思えたのでしょうね。あの頃の私は?」
楽しそうな語り口に、真海まで引き込まれてしまった。
「そうね、本当はお母さん欲張りだったのよ」
真海は返答した。
「きっと、分教場そのものが、私の家族だったのよ」
「まあ、天真爛漫なんだから」
「もう一度、帰ってみたいあの頃に」
段々、声が小さくなって行く香織である。
「あらあら、お母さんたら、まるで駄々っ子になったみたい」
「だってさ、真海」
急に、目からなみだが溢れ出して来た。
香織にとって真海が成長して行く様子は嬉しい事に違いないが、何分一人っ子である。
いつか、娘がどこか遠くの世界へ行ってしまう様な幻想に捕らわれたのであろう。
真海十五歳、中学校の卒業式を済ませた翌日、二人は祖母の待つ、この春照を訪れていた。
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まとめtyaiました【短編小説・永遠の処女1】

短編小説・永遠の処女1そうね、どんな名前を付けてあげたらいいのでしょうか。こんなにも愛しくさせる娘には。その人の名は真海『まなみ』と言う。少女と呼ぶにはあまりにもふくよ...

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プロフィール

白浜 砂夫

Author:白浜 砂夫
どうも ”しらはますなお” です。

岐阜県大垣市在住
昭和24年1月11日生まれ
67歳
B型

好きな歌人は、女性では与謝野晶子、男性では、島崎藤村、石川啄木です。詩や和歌や小説を書き始めて20年あまりになります。鹿鳴館を舞台にした小説を書いております。63歳にして一念発起してパソコンを始めました。ブログにも初挑戦です。

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