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短編小説・鹿鳴館の淑女たち8(了)

短編小説・鹿鳴館の淑女たち8(了)


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東京からこちらへ参りました。
家並みの綺麗な事、瓦の正しさ、女の綺らびやかさ、道行く人の穏やかな面輪。
世の中には、本当に不思議な所もあるものと感じました。
東京では、あの埃りっぽい中を、歩いたりする事に躊躇いがあります。
でも、こうして懐かしい故郷に帰り、聞きなれた鐘の音を、朝な夕なに親しみつつ、落ち葉の音さへ聞こえますほど、静かな山荘で、人の親切をしみじみ受けて、過ごしています。
いつぞや、先生も、御眺めあそばした西の山々、東寺の塔は千年の泰平を夢見ておるかの様に、ぼんやり、朝霧の中に眠っているようです。

武子はこの様に、便箋に書き留めている。
武子にとって、京都は故郷。それでも山荘の秋は淋しくてならなかったであろう。
毎夜、一首、二首とまとまりのつかぬままに書き付けた歌。
それは、恋しい先生に謡ってもらいたい、和の歌の相聞歌の世界だったのでしょうか。
やがて明治も終焉を迎えるのである。

四十五年七月三十日。
東京に本社をもつ新聞社は、ロンドン発の記事を伝えている。
イギリス国の、アーサー、オッコンノート殿下は、ヨークで行われた、衛生博覧会の開会を司どられたるが、その際演説して曰く。
「イギリスは、日本に学ぶべきものすこぶる多し。なかんずく、いかに低級の家庭といえども、常に清潔なるがごとき点、すなわち是なり」
殿下は、冷静にしてよく日本のことを研究していると言う事であろうか。
当時、我が国では、手洗い、すすぐ、所謂、うがいの実行を始め、朝の挨拶、礼儀、身の回りの整理整頓に力を入れていたのである。
なかんずく、やがて母となる女性の、家政教育を早くから立ち上げた事は、当時の教育関係者の、人格と力量が正に優れていたと言っても過言ではない。

この頃、歌子は実践女学校の経営に専念していた。
歌子が学習院の教授兼女子部長の役職と決別したのは、四十年十一月二十八日の事である。
壬生の小夜子は歌子に招かれて、学校を訪問したのである。歌子と小夜子は向き合っていた。未来と理想を語るのが、淑女たる所以であろう。
「私の理想、そうねえ」
と言って暫し間を置いた歌子。
「先生」
と小夜子。
「そうね、この広い世界ね」
「世界」
と聞いて驚く小夜子。
歌子は、明治二十六年、欧米各国への視察を命じられている。
この頃から考えが変わってきている。広い世界を見たからであろう。自身の中にあった、皇室中心主義が少し色あせて来ていた。
「この広い世界を舞台として、活躍してくれる学生を作る事ですわ」
と歌子。
「先生には、日本はあまりにも狭すぎるのですねえ」
と言って微笑む小夜子。
「そうですはねえ、才媛は国境を作らないし、また、教育に国境があってはならないと思います」
と歌子。
「先生は怪物ですわ」
と小夜子。
「私が、怪物?」
「ええ」
鹿鳴館の孔雀とも言われ、数々の批判の嵐のなかで生きてきた歌子。
歌子の脳裏をかすめたものは何であったのであろうか。




(了)
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まとめtyaiました【短編小説・鹿鳴館の淑女たち8(了)】

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プロフィール

白浜 砂夫

Author:白浜 砂夫
どうも ”しらはますなお” です。

岐阜県大垣市在住
昭和24年1月11日生まれ
67歳
B型

好きな歌人は、女性では与謝野晶子、男性では、島崎藤村、石川啄木です。詩や和歌や小説を書き始めて20年あまりになります。鹿鳴館を舞台にした小説を書いております。63歳にして一念発起してパソコンを始めました。ブログにも初挑戦です。

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白浜砂夫の電子書籍




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