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未来短編小説・左大臣様はミュージックがお好き5

未来短編小説・左大臣様はミュージックがお好き5


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                                未来短編小説・左大臣様はミュージックがお好き3


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喫茶店内に流れる(ボレロ)、フランス国の作曲家、ラベエルが作ったボレロは流れる。
左大臣様と、富山の局は、自由に語り合える場所を求めて街に出た。
二十二世紀を少し述べるならば、湾の上、水上に浮かぶ高層ビル。六十~七十階建ては常識である。水上に浮かぶ高層ビルを、現実のものとして確認するには、夜、明る過ぎるほどのライトに照らし出された水上を見てみると良いだろう。一際光彩を放っているのである。
緑の色彩も鮮やかに続く街路樹の並木道。こんな、古きよき時代、十九世紀を思わせるような古典の世界に入ってしまったのである。
喫茶店とも、カフェテラスともいう、歌の小路はそこにあった。
茅葺きの屋根、太い柱で組まれた室内。杉の木で作った階段。仄かに明かりを灯すガス灯。
杉の木で作った階段を上がり、薄暗い店内に入る。
バリアフリーと、超高層、水上の建築物それらは全て、最新の工科学の粋を集めたものである。しかし、心の安らぎとなると、また別問題である。
富山の局は、わざと段差を付けたような、わざと狭さと奥行きをつくったような、こんな店に引かれていったのであろう。
富山の局は、この店で、美味しいコーヒーをいただきながら、学生時代に学んだ、世界の女流詩人の詩歌を、口ずさんでいたのである。
それは、至福のときといってもよかった。ふわーっと、自身を包んでくれる優しさが、そこにはあった。
「気に入ってもらえましたか?」
と富山の局。
「勿論、とても素敵です」
と左大臣様。
「それは有り難いことですは」
と富山の局。
「どうして此処をご存知なんですか?」
と左大臣様。
「まあねえ、ある人に教えてもらったのです」
「ある人に?」
と左大臣様。
でも、もうこの先は聞くまいと決めたのである。
いつか来る別離、別れの日。その日の来ることを思えば、今の現実を楽しむ方が良いと考えたのである。
店内に流れるボレロよ、君は何も語らないけれども、別れの日は、ボレロが連れてくるのでしょうか。
それとも、彼女の涙が連れてくるのでしょうか?
「どうしたのですか?」
と左大臣様。
「ううーん」
首をふるのである。
ボレロよ、泣かないで。
名曲に重ねる、愛の脚本(シナリオ)。望むと望まないとにかかわらず、愛の脚本は進んでいくのでしょうか。
「どうしたの?」
と左大臣様。
「貴方が、立派な人に成られて。ただ、その事が嬉しくて」
と富山の局。
「君のお蔭だよ」
「いいえ、貴方の精進の賜物ですは」
と富山の局。
「いいや、君無くして、今日の私はない」
と語気を強めたのである。
「まあ、それはそれとして、昔が懐かしいですわねえ」
と富山の局。
「昔、遠い過去がねえ」
「そう、一緒にバンドを組んで、旅回りをしていた頃」
と富山の局。
「君もか。実は私もそうなんだ」
「あら、左大臣様も」
「そうだねえ。若き日々の、何か夢を見ていたような」
と左大臣様。
「何か、夢を見ているような、夢を追いかけているような、ミュージックへの憧れ。それが、左大臣様には有りましたわねえ」
と富山の局。
「君には?」
「ええ、勿論、私にもありました」
「二人は、また、昔に戻ろうか」
と左大臣様。
「戻れるものならねえ」
どうやら、二人の心は、何時まで経っても、若い頃のままでいるようだ。

それから日々は流れて、左大臣様に漂う哀愁。富山の局に対する恋心は、増すばかりであった。しかし、彼女は、もう自分一人のものではない。
世界の人民の為に存在している秘書官なのだ。それが、また、辛いところではある。
垣根の垣根の回り角、焚き火だ焚き火だ落ち葉焚き、あたろうかあたろうよ、北風ピューピュー吹いている。
左大臣様は、悲哀を込めて歌うのであった。
そばで、この歌を聞いていた山路の局は、
「どうしたの。元気がありませんは?」
と気を使いながら声を掛けたのである。
「山路の局。お前も歌え、歌うのじゃ」
「嫌です、私は」
と山路の局。
「そうなんだ、そうなんだ。垣根と垣根の間を行ったり来たりするんじゃ」
「誰とですか?」
「お前と富山の局を連れて、世界中を飛び回るのじゃ」
と左大臣様。
「え、私もですか?」
「そうだ、君もだ」
果たし三人は、どんなミュージックを引っさげて、世界中を飛びまわろうとするのであろうか?

中川の局との会話。
「オペラといえば、何と言っても、チャイコフスキー作曲の、幻想序曲(ロミオとジュリエット)とだね」
と左大臣様。
「交響曲、序曲のロミオとジュリエットは二百年を越える歴史がありますわ」
と中川の局。
「幻想を取り入れて、交響(曲)ではない、交響(詩)としたのには、何故だろう」
と左大臣様。
小さな、ヴァーチャル会議室での会話である。
二人の会話に、山路の局や、富山の局も加わったのである。
「まあ、オペラは水の都で栄えたのねえ」
と富山の局。
「水の都といえば、べネチアですねえ」
と山路の局。
同意をもとめるのである。
「そうじゃ」
「左大臣様、花の都といえばパリでしたねえ」
と富山の局。
「シャンソンの都といえば、パリと言いたい中川の局もいる」
と左大臣様。
「まあ、先を越されましたは」
と富山の局と、山路の局。
「水と花、なんという取り合わせじゃ?」
と左大臣様。
「左大臣様、どうされましたか」
と中川の局。
「ベネチアの空に、リートは流れ、パリの空に、シャンソンは流れる。ああ」
とため息をつく、左大臣様であった。
「そうですはねえ。でも、どうしたというのですか?」
と山路の局。
「お前には、ロマンと言うものがないな」
と左大臣様。
「ええ、至って薄情ですから」
と山路の局。
「美しい花を愛でて、清らかな言の葉を敬う。大和(やまと)心じゃ」
と左大臣様。
「はあ、大和心」
と山路の局。
「大和心が分からないのか」
と左大臣様。
「ええ、私は、宇宙人ですから」
と山路の局。
「まあまあ」
と中に入る富山の局。
「何時から、宇宙人になったの?」
と中川の局。
「嘆かわしや。私のそばに、ロマン、美的センス。それから、それから、詩情、ああ、なんと」
と左大臣様。大袈裟なポーズで言うのである。
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プロフィール

白浜 砂夫

Author:白浜 砂夫
どうも ”しらはますなお” です。

岐阜県大垣市在住
昭和24年1月11日生まれ
67歳
B型

好きな歌人は、女性では与謝野晶子、男性では、島崎藤村、石川啄木です。詩や和歌や小説を書き始めて20年あまりになります。鹿鳴館を舞台にした小説を書いております。63歳にして一念発起してパソコンを始めました。ブログにも初挑戦です。

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