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短編小説・(大垣市)水門川9

短編小説・(大垣市)水門川9



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                                   短編小説・(大垣市)水門川8





勉強するということ、孝夫が語る言葉は、恩師の言葉でもあった。
「少しだったらいい」
「「少しだったらできる」
「うん、うん」
孝夫は大きくうなずいた。歌子は皆を見渡して言った。
「一生懸命勉強したら、そうねえ、孝夫さんにドライブに連れていってもらいなさい」
「ドライブ、ウフ、うれしい」
と、静香は騒いだ。
「ああ、いいとも」
孝夫は承託した。
「それでいつ、いつなの」
好恵が甘えてくる。
「いつかねえ」
歌子から一筋の涙が流れた。
「何時でも連れて行ってやるよ」
孝夫は、涙の訳を知ったのである。
「私、故郷に帰るかもしれない」
歌子の、インパクトのある言葉。
二人は、大きな衝撃を受けたのである。
昼間はまだ暑い日が続いているのに、
夜の秋ともなれば、心はちじに乱れて、寝られぬ夜が苦しくなる。
故郷は、父なる大地、母なる都ぞ。命ある限り消え去りはしない。
東京は、心の都であるが、心の故郷にはなれない。
東京の大学へ行って、学問の道を修めたいとは思ったが、住みたいところと思ったことはない。母、富子は、孝夫の人となりを知っているがゆえに
「そう、この子がねえ、東京にねえ。やっぱりねえ」
と、孝夫に語る言葉は余りにも寂しいものであった。
孝夫の、苦悩は深まり行くばかりであった。
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短編小説・(大垣市)水門川8

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ほんの数日後のことである。
歌子のことが心配になって、寮に電話をいれた。電話の応対に出たのは好恵たちだ。
「お姉さんの恋人ね」
そう言ってから、急いで歌子を捜すのである。
「孝夫さんね」
元気のない歌子。
「俺のこと、恋人だってさ」
「ごめんなさい。恋人なんかじゃないもんねえ」
「いいよ、そんなこと」
「それで」
小さな声である。
「いや、どうしてるかと思ってね」
「うん、そうね、わかっているくせに」
あなたのことしか考えていないと言いたかったのであろう。
「孝夫さん」
彼女は少し考えた。
「ねえ、今度三人で、行くけどいい。一緒に食事しましょうよ。あの娘達ったら、休日なのに何処へも行かないの」
孝夫は、少し考えた。胸が熱くなるのを覚えたのである。
「ああ、いいとも、奢ってやるよ」
「ありがとう。甘えてもいいのねえ。うれしい」
「いいさ、妹みたいなんだろう」
「そうよ、妹よ。私の妹なの」
歌子に、明るい声が戻ってきた。
次の日曜日の、午前十一時。
四人は、大垣駅まえのレストラン槌谷のビルに入っていった。食事は二階の中華レストランである。四人は同じテーブルについた。孝夫は、八宝菜の定食セットと、別メニューで酢豚とスープを注文した。
「これでいい?」
「ウワー、ご馳走だ」
うれしそうな、静香と好恵の声。
「甘えちゃってごめんなさい」
明るい歌子の声。
「何だ。甘えたかったのか」
孝夫には、複雑な女心がわからない。別れを決意したあとのお願いだったのである。
「学校は休まずに、続けて行ってね」
と、歌子は言う。
「休まずに行く」
静香は答える。
「私も休まない」
好恵は、明るい娘のそのままで、言うのである。
「休むこともあるの?」
孝夫は質問する。
「休んだことはない」
「ない」
「じゃ、立派だ」
「立派?授業中寝てばっかりしている」
静香の言葉。
「疲れて寝てばっかりしている」
好恵が続く。
「ウーン、休まず学校に行くだけでいい」
と、孝夫は答える。
「学校には、行くだけでいいのよ」
歌子はなだめる。
「俺なんか、皆出席で、卒業式で特別賞を貰ったもんな」
「貰ったの」
感心する歌子。
「そうだ、学校へ行くだけでいいんだ」
「私、休まずに行く」
「私も休まずにいく」
好恵も続く。
「いったら、少しは覚えてかえることがある。それが勉強ってもんなのだ」
と、孝夫は語る。

短編小説・(大垣市)水門川7

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孝夫は語る。
「俺、将来は、先生になっても良いかもしれない、と思ったね」
「あなたが、将来は先生にねえ。きっと同じことをするかもね」
歌子は考えた、孝夫と私を隔てているもの。それは歳の差、
それとも、東京への憧れ、東京の大学を受験したよ、言っていたものねえ。
どちらにしても、攻めるには厳しい、水門川の外堀のようなものなのでしょうか。
夏は夕涼がいい。
歌子は浴衣を着て現れた。彼女のいう、贅沢といっていい。
思い切って買ったというのである。孝夫と二人で打ち水をした街を歩きたくなったという。
二人はとんかつ料理の美味い店に入った。孝夫は、味噌カツ定食が大好きだ。その味噌カツの美味さを、この店へ入ってから知ったのである。
「今日は私に払わせてね」
歌子は財布からお金を出した。あわてて孝夫は止めた。何処え行っても、乗合茶房をはじめ、どの店で食事をしても支払いをした。歌子の、心根の優しさを知ったときから、充分に満たされていた。
「年上の人が払うものなのよ」
それは、恋するゆえの抵抗なのか、悲しい叫びなのか、分らないままである。
二人はいつしか、城東の、街、店店まで歩いていた。
「母から、お見合いをさせるから、帰ってこいと言ってきたの」
「お見合い」
聞いても驚かない孝夫。
「見合いって言ってるけど、それは、形ばっかりで、結婚させられちゃうかも」
寂しそうに言う歌子の声。
「お父さんも、帰ってこいよって言っているんだねえ。」
質問する。
「父も同じ、お見合いをさせるから帰ってこいと言っているのよ。如何すれば善いのよ」
「如何すればいいのよといわれても」
後が続かない。
「そうよね。そうよえ。私なんか帰ってしまえばいいのねえ」
溢れくる涙を、ハンカチでぬぐ歌子の姿を、街灯りは映し出していた。

短編小説・(大垣市)水門川6

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北原歌子、あなたは心の中に、何を沈めていたの?
助手席から見る、長閑な田園風景
早乙女に、過去の自身を見付けても、将来の自分を見付けることはなかった。
この人と一緒に生きていきたい。いつの頃からか、思いを募らせていったのである
とある日曜日。
場所は、いつもの乗合茶房での昼食の時間であった。
メニューといえば、八宝菜と酢豚の中華定食を注文した。
「歌子さん」
歌子は直ぐに返事した。
「歌、高校三年生を、中学三年生と置き換えて合唱したことがあるんだ」
「ホー、いつのことなの」
「中学三年生の時だ」
「中学三年生の時にねえ」
興味を示す歌子
「そうだ、その頃からヒットした歌だ」
「その歌を、いつ歌ったの」
「卒業式の前日、最後のクラス会だ」
^紅い夕日が校舎をそめて。楡の木陰に^
歌ってみる孝夫。歌子は黙って聞いていた。
「杉原豊先生っていうんだけれども、クラス会の時に、急に歌いだしたんだ」
「まあ、それで」
「僕はビックリしたよ、初めて聞く歌でもあったから
「そうでしょうねえ。舟木一夫のデビュー曲だから」
「後から知ったんだよ、この歌手の名前を」
「それで、合唱になったのは」
「豊先生は、一曲歌ったあと、中学三年生と変えて、皆で歌おうと言いだしたんだよ」
「キット若い先生ね」
「先生になって二年目だ」
「それで合唱となったの?」
「歌った。それが不思議と、心は一つになっていたね」
「合唱の良いところがでていたのねえ」
うなずく孝夫。
「それで先生のことをどう思ったの」
「うん、そうねえ、少年の心を抱いているというか、ロマンティストというか、、、豊先生を、夢に生きる人というんだろうねえ」
歌子は、何でも語ってくれる孝夫が好きだ、
「俺、そんな、豊先生が、一遍に好きになってしまったよ」
プロフィール

白浜 砂夫

Author:白浜 砂夫
どうも ”しらはますなお” です。

岐阜県大垣市在住
昭和24年1月11日生まれ
67歳
B型

好きな歌人は、女性では与謝野晶子、男性では、島崎藤村、石川啄木です。詩や和歌や小説を書き始めて20年あまりになります。鹿鳴館を舞台にした小説を書いております。63歳にして一念発起してパソコンを始めました。ブログにも初挑戦です。

最新出版物
白浜砂夫の電子書籍




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