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短編小説・学級委員長物語・連載予告

短編小説・学級委員長物語・連載予告

皆さんお元気でしたか。
皆さんから、激励のお便りが、届くのを最大の喜びとして、これからも、執筆に、現地取材に、奮闘してまいりたいと思っております。

次回予告。
短編小説・学級委員長物語を、八月第一土曜日より、連載してまいりたい思っています。
今、問題になっているいじめ問題。
先生を責め、校長を責めるだけでは、問題の解決は進まないだろうと思います。
生徒の、一人一人の個性、良いところも悪いところも、誰よりもよく知っていた学級委員長。先生と生徒の橋渡し役でもある。大変ではあると思いますが、がんばっていただきたいと、そう願わずにはいられません。
私も、小学校五年、六年と、学級委員長を、務めさせていただきました。
六年の、三学期には、担任の先生が、病気で倒れて入院するというアクシデントに見回れました。孤独の戦のなか、クラスをまとめ、卒業記念演劇を成功させ、卒業式まで、一人の脱落者を出さず引っ張っていくことができました。
大変でしたけれど、良い経験だと思っています。
会合をまとめることができるのも、小さな組織なら、トップを努めて、成功までもって行くこともできました。
あの、経験があったればこそと、思っています。
学級委員長がんばれ。こんな思いをこめて、連載してまいります。
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詩・悲しみのアリア

詩・悲しみのアリア

悲しみのアリア、我が心の歌
悲しみのアリア、我が心の叫び
ああ、果てしなく続く物語よ
ああ、悲劇と、喜劇と、苦闘の、
人生の物語に終わりはないのか

私は、逃げない、
逃げてはならないのだ
勝利をこの手につかむまで、

悲しみの、アリア、我が心の歌
高らかに、歌いながら、
未来を目指すのだ

平成二十四年七月二十七日作

随筆・徒然なるままに・盛夏に咲く花のように

随筆・徒然なるままに・盛夏に咲く花のように

皆さん、お元気ですか、そして今日も輝いていますか。
皆さんにお届けした、短編小説「永遠の処女」は完了いたしました。
ご愛読、厚く厚く御礼申しあげます。
皆さんからいただいた感想は、
へえ、あなたがこんな小説を書く人だとは、信じられない、意外なことを書く人なんだね、とかが多かったようです。
中には、自身の経験を書いているんだ、とハッキリ言う人もいました。
経験、少しはあったと思っています。作家とは、たとえ少しの見聞や経験でもなければ書けない人である、
というのが私自身の考えかたでもあります。それを「悲しみの財産」と考えています。
その、「悲しみの財産」を、生きてることの喜びと、明日が必ずくる幸せと、まだ希望を持って生きられる強かさを、まるで映画のワンシーンを見せ付けるように、書いてみたかった。
永遠の恋。それは私の憧れ。永遠の恋人。それは私の理想の人。
永遠の処女、それは私の夢、まぼろしの中に存在する人。
それは、盛夏に咲く、向日葵「ひまわり」のよう。太陽に向かって咲く向日葵のよう。
激情を秘めて咲く花のよう。
わが心の奥に、秘めて咲いている花が書かせた
「永遠の処女」
盛夏に咲き誇る花と、永遠の処女を、いつまでも、忘れないで覚えていてくださることを切望いたします。

平成二十四年、七月二十二日作。

短編小説・永遠の処女15(了)

短編小説・永遠の処女15(了)


                                         短編小説・永遠の処女1

                                         短編小説・永遠の処女2

                                         短編小説・永遠の処女3

                                         短編小説・永遠の処女4

                                         短編小説・永遠の処女5

                                         短編小説・永遠の処女6

                                         短編小説・永遠の処女7

                                         短編小説・永遠の処女8

                                         短編小説・永遠の処女9

                                         短編小説・永遠の処女10

                                         短編小説・永遠の処女11

                                         短編小説・永遠の処女12

                                         短編小説・永遠の処女13

                                         短編小説・永遠の処女14



あれから、季節は静かに移ろいで行く。
空蝉の、泣き止みぬれば、秋が来る。
やがて、真海の身体は抜け殻らとなって、この世から消えてゆくであろう。
二人は笑みを交わしていた。
「愛しき人、君の名は真海」
それは、やがて孝夫の眼前から消えて逝く対象を恋慕う、切ない叫び。叫び以外の何ものでもない。
孝夫は、真海をその手で引き寄せて抱きしめた。強く強く抱きしめた。
溢れくる涙で、もう何も見えない
真海は、抱き締められながら、彼の手を捜し求めた。孝夫の手は預けられたまま、重ねた手で、乳房をまさぐる真海。
「これで良いのね。これで良いよね」
と言って甘える真海。
孝夫は、また、泣き出した。
「真海、お前が好きだ、大好きだ」
絶唱は、病室を突き抜けて、天まで届いたのである。
看護婦さんが、何事かと飛び込んで来たものの、涙をハンカチで拭いながら、静かに退散していくよりほかになかった。
さようなら、永遠の恋人。
君が幻の世界へ消え去っても、誰も忘れたりはしないだろう。

あれから、幾年月が流れたであろうか。
孝夫の姿は、東京は、神田駿河台のキャンパスにあった。
一度は諦めた、学問への道。なかでも文学、詩歌の道は、彼を抜け殻から、前途あふれる青年に引き戻してくれたのである。
このキャンパスとも、もう少しでお別れである。
「孝夫さん、これからどうするの?」
学友も、なぜか気になって仕方がない。
「故郷に帰って先生になるんだ」
「じゃ、君の言っていた学問の道は?」
ともう一人の学友。
「うん、生涯学び続けることのように思えるようになったから」
その言葉は、二人へのお礼の言葉であろう。
あくる日、孝夫は、久しぶりに銀座に出てみた。
古き好き時代の、銀座は華やいでいた。
その中で、そっと優しく風が連れてきた人がいた。故郷から運んできた人ならなおさら良いではないか。
振り向けば君がいた。
「真海、真海」
帰ってくる笑顔まで、そっくりである。
「真海、真海」
と、孝夫は叫んだ。



(了)

短編小説・永遠の処女14

短編小説・永遠の処女14


                                         短編小説・永遠の処女1

                                         短編小説・永遠の処女2

                                         短編小説・永遠の処女3

                                         短編小説・永遠の処女4

                                         短編小説・永遠の処女5

                                         短編小説・永遠の処女6

                                         短編小説・永遠の処女7

                                         短編小説・永遠の処女8

                                         短編小説・永遠の処女9

                                         短編小説・永遠の処女10

                                         短編小説・永遠の処女11

                                         短編小説・永遠の処女12

                                         短編小説・永遠の処女13



「わからないの、何が宝物なの」。
「あなたとの思い出」
真海は一歩さがった。
「全てをあなたに捧げても、良いと思っているのに」
真海は泣きだした。
「お前の汚れなき美しさを、この目に焼き付けて、俺は生きていく。そうでなければ、一人でなんか、生きていけない」
「私はきっと、忘れ去られてしまうわ」
真海は、溢れくる涙をぬぐった。
「思い出は、美しい程、行き続ける。そう信じていたい」
孝夫は真海の肩をゆすった。
永遠を忘れて現実しか見えない真海には、なぜか冷たすぎる言葉のように思えた。
「こんなにも、あなたを愛しているのに、抱いてももらえない」
嗚咽は、絶望へと変わっていった。限りある命が思索することを許さないのだろうか。

そして、次の日曜日。
うっとうしい梅雨が終われば、やがて季節は盛夏へと移っていく。
紫陽花が、やつれた姿を晒すのも、この頃のである。
少々のいさかいが、真海を何故か気弱にしてしまっていた。
「仕事が忙しいものね」
いやみを言ってしまった真海。本当は、もっともっとたくさん、会いにきて欲しいのだ。

夜更けて病室を抜け出した真海。
「孝夫さん、ごめんなさい。あなたを困らせたりして。心の中では理解していたのに。本当にごめんなさい」
「僕のほうこそ、うん、悪かったね」
電話から聞こえてくる声。真海の頬に一筋の涙が流れていた。孝夫の明るい声が、
何よりの良薬となったようである。静かに受話器を置いた真海だった。
盆も過ぎた頃のことである。
週刊太陽の初秋号に、特集記事が掲載されている。
記事の冒頭に、遠條真海と山名孝夫の、それは見事なツーショットの写真が見受けられるのである。
(命の炎を、燃やし続けて)と大書されている。
それは、美しくも薄幸の乙女が、青年の純粋な愛に支えられて、生命を長らえているようすが克明に記されているのである。
「真海さん言葉を」
「今までは、彼がいつも身近なところにいて、支え励まし続けてくれました。人は、命ある限り生きなければならない、ということも、短い人生になるかもしれませんが、悟ることができたと感謝しています」
「この後は」
「天国へ行ったならば、私は彼の幸福を見守っていきたいと思います」
カメラのフラッシュが続く。哀愁に満ちた乙女の笑顔ほど、美しいものはない。
記者は感激した。
記者は、このように文章をまとめている。

始めは、一瞬の愛からかもしれない。それが純情な心に育まれた時、やがて、永遠の愛への第一歩となるのであろうか。たとえ、美しき乙女の命の炎が燃え尽きてしまおうとも、この努力を惜しんではならない。
永遠の愛の為に、努めて励まし続けなければならないのである。

孝夫が私たちに教えてくれたもの、記者は、核心を突いているように思える。
それから、孝夫は時間の許す限り、病院へと通うようになっていた。
さすがに、以前のように連続して、夜を共にするということは、できなくなった。
それは、真海より孝夫にとっての試練だったようだ。
愛する人の傍にいてやれないもどかしさ。それが、孝夫自身を、どんなにか苦しめたか、計りしれない。日捲りを重ねてめくる日もあった。

短編小説・永遠の処女13

短編小説・永遠の処女13


                                         短編小説・永遠の処女1

                                         短編小説・永遠の処女2

                                         短編小説・永遠の処女3

                                         短編小説・永遠の処女4

                                         短編小説・永遠の処女5

                                         短編小説・永遠の処女6

                                         短編小説・永遠の処女7

                                         短編小説・永遠の処女8

                                         短編小説・永遠の処女9

                                         短編小説・永遠の処女10

                                         短編小説・永遠の処女11

                                         短編小説・永遠の処女12



日々は流れて、卒業式の日を迎えた。
人は祈りの中から何を見るのであろうか。
祈る心から何を得るのであろう。真海は、ベッドに腰掛けていた。窓際に向かって両手を合わせている。
「あの人は私のもの。永遠までも連れて行きたい人」
ささやくように、問いかけてみても、返って来る言葉はなかった。
しとしとと降る雨。三月の雨は涙を誘い、風さえも泣かずにはいられない。二人の歴史さえも、あっけなく消し去っていくのだろうか。
窓越しに見ゆる君の面影。流れては浮かび、また、流れていくあなた。窓ガラスに手を当てて触れてみる。あなたが来られない今日という日。それは真海にとって、やがて訪れる
別離の始まりだろうか。
今頃、孝夫さんは、卒業式の会場である体育館にいるはず。
りりしい制服姿が浮かんでくる。何で、こんなにも輝いているの。
あなたと私の卒業証書。あなたの手に握られていることが、とっても恥ずかしくなってしまう。まるで、あなたに抱かれているみたいで。お願い、そっと優しく抱きしめてほしいの。
あなたの、手の温くもり。その手で引き寄せられたら、私はきっと泣いてしまうでしょうね。真海の心を歌う。
雨はやがて小降りとなり、涙の後にはまぶしい陽光がさしてくるのだった。
卒業式も見事なまでに、完璧な出来映えで、終えることができたのである。
この後、卒業証書総代を務めた、学級委員の和夫をはじめ、大学へ入学するものと、都会に出て就職するものと、地元で働くもの達とに別れていったのである。
和夫は、京都大学に入学した。真海との思い出がある古都が、なぜか良かったのであろう。
幸子は、地元の教育大学に入学した。
「故郷、去りがたし」
幸子は、万感の思いをこめて孝夫に言ったのである。
「和夫って、以外と純情なんだ」
と孝夫。
「あなたも純情よ」
と幸子。
少し色っぽくて大人の女になりつつあった。

卒業式の翌日、二人は町の中心街にある喫茶店でおち合ったのである。
「真海が待っているから、もう出ようか」
「そうねえ、また会ってくれる?」
「ああ良いよ、幸子が入学するまでの間ならね」
「そうね、そうよねえ。ありがとう」
幸子の笑顔が、青空をバックに写し出されて輝いていた。

あれから、少し時は流れた。
久しぶりに訪れた病院。別に変っている様子もない。
孝夫は、少しホットしていた。通りかかった看護婦さんに会釈をして、病室に入った。
「ご無沙汰していてごめんよ」
申し訳なさそうに言う。
「あら、そうね」
真海も気まずそうに言う。孝夫は背広を脱いだ。初めて見る彼の背広姿。
なんて凛々しい青年になったのであろう。真海は、彼から受け取った背広を、思い切り抱きしめた。抱きしめた後、衣紋掛けに吊るすのだった。
「ごめんよ、まだ仕事に慣れなくてね」
こんな言い訳しかできない孝夫。真海は、彼の胸を思いきりたたいた後、彼に身を任せていった。涙が止め処もなく溢れて来る。手紙の一つも出さずに過ごしたことを詫びる孝夫。
「ごめんよ。本当に御免よ」
そう言った後、もう一度強く抱きしめた。
窓際に立てば、藤の花が咲いているのが見える。藤棚は満杯である。
蔓を伸ばして咲き誇っている様子がうらやましく見える。
二人はただ黙って見詰めていた。
それは、卒業式の翌日。孝夫と幸子が連れだって訪れてからしばらくしてのことだった。

そして、ほんの少し時は流れて、季節はといえば、梅雨に入った頃のことである。
午後の、陽射しの強い時間の中で、なにか落ち着いた気分が真海にペンをとらせていた。

ペン先が走る。お母さん、私が死んでもどうか悲しまないで下さいね。
私を育んでくださったお母さんに、なんのお返えしも出来ないで、大変心ぐるしく思ってまいりました。そのことを今のうちに書き留めておきます。
お母さんが、以前病室で語って下ことに、私は答えなければならないと思います。
お母さんに涙は似合いませんよ。母はどこまでいっても気強くなければいけないのです。
私の不幸を嘆いていたお母さん。私は本当に不幸な娘だったのでしょうか。
私には孝夫さんがいます。それに、和夫さん、幸子さんや、クラスメートから、お手紙をいただいています。
夏休みには必ず、会いにいくから、盆休みには会いにいくから、という嬉しい手紙をいただいています。こんな良いクラスメートに恵まれて、とっても幸せだったのです。ありがとう、愛しきクラスメートよ、麗しの青春よ。わが思いは、永遠に続いて行くでしょう。
さて、この後は、天国から孝夫さんを見守って行きます。孝夫さんが災難にあう時は、私が盾になり、あの人が病気の時は看護婦になり、あの人が仕事で家を留守にしている時、大切な妻や子供に、大難が起きたなら、私は、天国から急降下して救助に駆けつけるのです。私が死ぬということは、孝夫さんを、天国から見守る立場になるということなのです。これ程の喜びが、外にあるでしようか。
そして私は、あの人がもう一度、私の心に寄り添ってくる日を、気長に待っています。
人の世は移ろいやすく変れども、我が心は、決して変ることはないでしょう。
では、お母さん、毎日を健康で朗らかに過ごされますことお祈り申し上げます。

追伸、お父さんにも、どうかよろしくお伝えくださるよう、お願いして筆を終わらせていただきます。

真海より。

真海に、ペンを取らせたものは何であったのであろう。
来るべきX日を悟った?それもあるだろう。
ここは、やはり、孝夫の、地元で就職したことと関係しているとみてよさそうだ。
「私の為に」
「最後まで、傍にいてやりたいんだ」
病室での会話が、脳裏をかすめて離れなかったのである。

短編小説・永遠の処女12

短編小説・永遠の処女12


                                         短編小説・永遠の処女1

                                         短編小説・永遠の処女2

                                         短編小説・永遠の処女3

                                         短編小説・永遠の処女4

                                         短編小説・永遠の処女5

                                         短編小説・永遠の処女6

                                         短編小説・永遠の処女7

                                         短編小説・永遠の処女8

                                         短編小説・永遠の処女9

                                         短編小説・永遠の処女10

                                         短編小説・永遠の処女11



日曜日の午後のことである。
幸子が見舞いに来た。長い廊下をゆっくりと歩いて、病室の扉を開けてみる。
「真海、来たよ」
努めて明るく話す幸子。
「ありがとう、よく来てくれたねえ」
ベッドから降りようとする。
「座って、座って、そのままでいいから」
「うん。それじゃ」
と真海。
ちょっと元気のない声が、幸子には寂しかった。
「ねえ、北原先生や和夫さん達は元気でいる?」
「はーい、とっても元気でいます」
大袈裟なポーズを取って答える。
「よかった」
「あら、孝夫さんのことは聞かなくていいの?」
「ウフフ、いいの、いつも夢の中で会っているから」
「まあ、何て答えたらいいのかしら。夢で合いましょう。素敵なことよねえ?」
「ウーン、そうでしょ。そうねえ、恋のライバルに一本取ったかしら」
「あなたには勝てないはねえ」
幸子は、ホットした気分になった。
「卒業試験が迫っているけど、どう大丈夫?」
「ハーイ、私はバッチリです」
真海の、余裕に満ちた言葉。
「それより、孝夫さんよ。あなたに付きっ切りで、授業を休むこともあったから、私、心配だわ」
真海の顔色をうかがう幸子。
「大丈夫、大丈夫。私の強き祈りで、孝夫さんに、百点満点取らせちゃうから」
自信たっぷり話す真海。
「そんなのあり、信じられない」
「だったらその日だけ、透明人間になって、私が代わって、答案用紙みんな書いてしまうわ」
「まあ、真海だったら、百点満点取るのは、難しいことではないけれど」
後の言葉が続かない幸子。
「いいの、してあげられるのなら、しちゃいましょうよ」
「そうね、愛の力でしちゃいましょうよねえ」
と言って、ようやく笑顔を取り戻した幸子だった。

「幸子」
「何?」
真海の声色が違ってきた。
「体を捧げるってことは、いけないことなの?」
「捧げたいの」
と幸子。
「女だから」
難しい質問を、投げかけられたものだ。
「愛してしまったからじゃないの?」
「それもあるけれど、女として生まれたからには、女として終わってゆきたいの」
「私には、とても答えられないけど、相当な覚悟をしているみたいね」
真海は、首を振りながら
「ただ、愛に殉じたいだけ」
「全てを捧げた後、自殺するってことじゃないでしょうね?」
幸子はなにげなく言ってみたものの、急に心配になってきた。
「大丈夫、心配しないで、私は命を粗末にはしないから」
「そうだよねえ、そうだよねえ、真海はそんなことするはずないもののねえ」
真海はポツリとつぶやいた。
「永遠に変らぬ愛の為にどうすれば良いのかしら」
永遠に変らぬ愛を求めていく、それが真海の言う、愛に殉じたいということなのだろうか。
幸子は言った。
「私には、果てしないほど長く、愛せない」

短編小説・永遠の処女11

短編小説・永遠の処女11


                                         短編小説・永遠の処女1

                                         短編小説・永遠の処女2

                                         短編小説・永遠の処女3

                                         短編小説・永遠の処女4

                                         短編小説・永遠の処女5

                                         短編小説・永遠の処女6

                                         短編小説・永遠の処女7

                                         短編小説・永遠の処女8

                                         短編小説・永遠の処女9

                                         短編小説・永遠の処女10



孝夫は晦日から正月を、家で迎えていた。母親は、何とも言えない、寂しそうな横顔に、言葉を失っていた。
「お前の家はどこなんだい」
厭味の一つも言ってみたが、返って息子が愛しくてならなかった。
「そんなにも、真海さんのことが好きなのかねえ」
溜息を吐きながら、座卓におせち料理を並べてみたのである。

真海から手紙が届いたのは、七日正月も過ぎた日のことだった。
私は、十八の青春を迎えて、孝夫さんにお手紙を届けます。
ここに、孝夫に宛てた内容を書いてみる。

真に、新しいこの世の青春。まだ、日記の一ぺージさえ手のつけぬまま、そのままそっくりの一年が、今、私にプレゼントされたのです。
日記の始まりは、あなたとの会話から初めたいと望んでいるのです。孝夫さんに、この一年、幸多かれと祈っています。それが又、私の幸福でもあるのです。
けれども、私一人で、この身の不幸と戦い、勝利を得る力を持っていません。あなたからいただく、愛の力で越えて行きたいと、ただただ、手を合わせて祈っている毎日です。
叶うものなら、この一年、命永らえて、自分の力で、自分の運命を開きたい。それが、
十八の新春を迎えた、乙女の決意なのです。ああ、なんと愛しき孝夫さん。
どうか強く生き抜いて、私を勇気づけて下さい。あなたの支えがなければ生きていけないのです。あなたの支えを受けて、自身の宿命を越えて、永遠の愛で結ばれたいと願わずにはいられません。

孝夫は丁寧に、折りたたんで、もう一度封筒にもどしていた。
「この手紙は、俺の宝物だね」
こんなささやきでも、なぜか、余韻が残っている。
それは、風もない、肌寒くもない、午後の、陽射しの中でのことだった。

真海は、先生の許しを得て我が家へ帰った。父は仕事先から帰っていなかった。
母、香織は台所で、料理を作るのに余念がない。
「お母さん、ただ今帰りました」
台所へ向かう真海。振り向いて
「お帰り」
そう言ってから、香織はエプロンで、涙を拭うのだった。
「お母さん、何作っているの」
そりゃもう、お前の好きなカレーライスに決まっているでしょう」
「本当、うれしい」
真海の顔には、笑みがあふれていた。
「孝夫さんも、カレーライスが大好きなのよ」
大鍋をのぞき込む真海
「そうだねえ、孝夫さんも好きだったねえ」
さびしそうに言う香織。遠條家では父親も、カレーライスが大好きなのだ。いい大人がと思うのであるが、食べ物のことになると、こればかりは何ともならない。大鍋が必要なはずだ。
「ねえ、孝夫さんを呼んでもいい」
香織に甘える真海。
「今日は、家族三人で食事しましょう」
譲れない思いをぶつけるように言う。
「いや、孝夫さんを呼びたい。以前だって四人で楽しく、カレーライスを食べたじゃないの」
真海も負けていない。
うなだれる香織
「孝夫さんは、家族じゃないからねえ」
「家族じゃなくても、いつも私の心の中にすんでいるわ」
と言った後、真海はイヤイヤをした。
「そこまで言うなら」
とうとう、香織は折れてしまった。孝夫が来訪するのと、父親が帰宅するのが偶然にも重なってしまったのである。孝夫は照れくさそうに挨拶をした。父親は、嬉しそうに挨拶した。彼を息子のように思っている、父、孝明であった。
女二人に挟まれて、サンドイッチのように小さくなっている父である。嬉しくて仕方がない。そこのところが、香織にはわからない。
真海と孝夫は横並びにしてテーブルに着くのだった。本当に仲の良い二人である。

短編小説・永遠の処女10

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院内に戻る二人。担当医の朝倉先生は、真海の手をそっと毛布の奥に返した。
病状の悪化が、予想内であることに安堵した。
何て、生命力のある娘さんなんだろう。
「先生」
「なんですか」
「女性の魅力は、どこにあるのでしょうか?」
真海は、先生に質問した。
先生は、急に笑顔になった。
「誰か、好きな人でも居るんですねえ」
真海は、恥じらいながらも否定はしなかった。
「醜い、女性の魅力と、清純な乙女の魅力と、そう、二通りあるように思う」
「醜い女性って?」
「それは、仮定的に言ったのだけど、そうだねえ、子供を産んだ女性、社会で働いている女性ってことになるかなあ」
真海はしばし考えた後、
「では、心の美しいのはどちらでしょうか」
朝倉先生は、ハッとした。
「果たして、清純な乙女に、美しい心はあっても、思いやりの心はあるのだろうか?」
「思いやりの心って?」。
どこか、陰りのある言葉になってきた真海。
「そうだねえ。相手の人生を考えてやることかなあ」
と朝倉先生。
真海は、意味が飲み込めないでいる。恋人の一生を縛る愛の終末。
それは何か。
そんなことが許されて良いのだろうか。
朝倉先生は常々、彼女は自殺することもありえると思っていたのだ。
人の心は、脆く弱いものである。しかし真海は、想像を越えた女性に成長しつつあった。
死と向き合い、苦しみ悩んだ末、何かを摑みつつある。愛する人達の行く末、お世話になった人達の未来。案じる様になっていたのである。
「先生、命の有る限りあの人達を見守っていたいのです」
その言葉には、真実が込められている。
「ありがとう。皆に代わってお礼を言います」
朝倉先生の苦悩は、一瞬の内に消え去って行ったのである。

昭和五十年代も中頃、中秋の良き日。
この町で、仏教哲学大講演会が開かれている。これは、別に物珍しいことではない。
この町では、文化事業に力を入れて来たから、今日に至るまで、多くの人材を輩出して来たのである。
真海は、町の中心街に、買い物に出掛けて来たのだった。
許された短い時間だった。
三々五々人々は集まってくる。一つの流れに押される様に、会場に入って行ったのだった。凛々とした講師の声が伝わってくるではないか。
真海は、身を正して着席した。
人間の、この世での生は、唯一度のものと考えるならば、死への恐怖は、激しく深刻なものになり勝ちである。
仏法の、深き生命感である、
「三世、永遠の生命」
と言う考えに立てば、死は全ての終わりではなくて、新たな生『過去、現在、未来』の「未来」への旅立ちなのである。
まるで、明日への活力を得るために、睡眠を取り、リフレッシュして、朝を迎える様なものである。
講師の話は、淡々と続いて行ったが、実に解り易い内容だと、真海は感じ取っていた。
仏法の奥義を知ること、仏法の真実に迫ること、それも、今の私には必要なことかも知れないと思うのである。
愛する人達の為にも、私自身の為にも、もっともっと長く、価値ある日々を送りたい。
それが、許されない真海である。
少し涙がこぼれて来た。
真海は質問した。
「先生は先ほど、楽しき死、嬉しき死、歓喜の死があるはずだと、話しておられましたね」
「ハイ、そうです」
「私は、今を生きています。だから、楽しき人生、嬉しき人生、歓喜の人生を生きていますと言いたいのです」
真海は、質問したものの、自責の念に駆られてしまった。
「良く、質問してくださいましたね。その勇気を称えたいと思います」
講師は、壇上から深々と頭を下げた。
「だって私は今、恋愛をしているから」
と真海。
聴衆の中から笑い声が聞こえてきた。
講師は、大きく頷いた後、
「あなたの、愛する人達への思いは、只事ではないということです」
真海は頷いた。
「その愛は、他人ながら、羨ましくも、見事だと言っておきます」
座は静まり返って行った。
「生は表であり、死は裏、そんな言い方も、出来るかと思います。表裏一体ということでしょうか」
座はシーンとして、咳をする人もなし。
「あなたの、愛する人達への、熱き思い。それが歓喜の人生であると言われるのなら、それで良いと思います。それも、価値ある日々を生きていることになるのでしょうねえ」
真海は、席を立って御礼を言ったのである。
「あ、そうそう、もう一つ言っておきたいことがあります」
「どういうことですか」
「生命(生命体)には癖とか、傾向性があって、あなたは、来世もその先の世まで(永遠)、
恋に輝き、愛に煌めく人生を送ることが出来るでしょう」
ありがとう真海、よく質問してくださいました。仏法の真髄は、質問してくださった人の、人格と志で決まると言っても過言ではないと、そう考える講師であった。
これは、講師から真海へのプレゼントと言っても良いだろう。
生きるのだ、真海。命ある限り。永遠の愛のために、永遠の愛が存在することを証明するために。真海、命ある限り、生きて生きて生き抜いていくのだ。
それは、永遠の愛への階段を上っていくことになるのだから。
真海はといえば、ただ、黙って手を振るばかりだった。

短編小説・永遠の処女9

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そして日々は流れて、晩秋の一日。
ハイビスカスの花が、あたり一面に咲き乱れる高台に来ていた。
孝夫は、ゆっくりと車椅子を押していた。真海は車椅子に身を任せて、二人はここまで来たのだった。
「車椅子とは、ちょっと大袈裟さね」
そう言いながらも、甘えたくて仕方のない真海。
紅い色は情熱の色、咲き誇れば心の奥に眠っていた激情が甦ってくる。
何て言って良いのだろうか。まるで魂魄がしばしの月日を与えてやろうとでも言うのであろう。孝夫への一途な恋心が、炎となって燃え上がる。私は生きている、こんな感触に浸ることができた。真海は孝夫の手を探していた。見つけると強く握りしめた。
「ありがとう、孝夫さん」
連れて来てくれた彼に感謝した。孝夫はされるがままに手を預けていた。
「何て温かいのだろう」
孝夫は言った。
「ねえ、孝夫さん、一つ聞いてもいい?」
真海は真顔になっていた。
「ああ、いいよ、俺で答えられることなら」
孝夫は立ち止った。
人間って、同じ人を来世も愛することができるのでしょうか」
と真海。
その目は孝夫に注がれていた。
彼は少し考えた。
「今世で命の限り愛した人なら、来世でも愛することができる様に思います」
言葉を捜しながら答えるのだった。
微笑みながら言う真海。
「そうねえ、あなたが居てくれから、毎日が充実していたわ」
言葉が続かないでいる。
「私は、孝夫さんを苦しめているのかしら?」
「どうしてそんなことを言うの」
「孝夫さんは若いわ、これから恋愛だって、一杯できるのよ」
溜息とも無念ともとれる真海の言葉だった。
ハイビスカスの柵を抜けて車椅子を押し続けて行くと遥か彼方に、水平線が見えてくる。
「いつか二人は、あの海の向こうまで旅をしようよ。貴女が行けなかった修学旅行を、私は、してあげなければいけないのだ」
孝夫は、水平線を指差すのだった。
真海は首を振りながら言った。
「もういいの、もういいのよ、孝夫さんがそう言ってくれるだけで満足よ」
それは、彼への労わりの言葉であった。
プロフィール

白浜 砂夫

Author:白浜 砂夫
どうも ”しらはますなお” です。

岐阜県大垣市在住
昭和24年1月11日生まれ
67歳
B型

好きな歌人は、女性では与謝野晶子、男性では、島崎藤村、石川啄木です。詩や和歌や小説を書き始めて20年あまりになります。鹿鳴館を舞台にした小説を書いております。63歳にして一念発起してパソコンを始めました。ブログにも初挑戦です。

最新出版物
白浜砂夫の電子書籍




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